8月12日の1軍初マウンドから6試合で先発登板した種市。初白星はつかめず2軍降格となったが、「課題を克服していきたい」と成長を誓った

 涙があふれた。止まらなかった。17日のイーグルス戦(ZOZOマリンスタジアム)の試合後。監督室に呼ばれた種市篤暉投手はその場で2軍落ちを告げられた。1軍で6試合の先発チャンスをもらった。それでも勝てなかった。ラストチャンスと思って挑んだこの日は7回6失点。結局、1軍初勝利を手にすることなく降格が決まった。通告に、不甲斐ないピッチングを続けた自分を責めた。悔し涙が止まらなかった。

 「悔しくて、悔しくて泣きました。人前であんなに泣いたのは初めてだと思います。それくらい悔しかったです。勝てなかったのが悔しい。監督の期待に応えられなかったのが悔しい。チームの戦力になれなかったのが悔しかったです」

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 目を真っ赤にしながら涙を流し続ける若者を井口資仁監督ら首脳陣は落ち着くまで見守っていた。そして間をおいて指揮官は声をかけた。「これから、あとどれくらい野球をやりたいと思っている?」。少しばかりの落ち着きを取り戻した若者は間髪を入れず、力強く答えた。「20年、やりたいと思います」。涙目をこすりながらも力強く返事をした。その言葉がうれしかった。井口監督はニコリと笑うと優しく話しかけた。

 「じゃあ、この悔しさを忘れずに日本一勝てる投手になれるようにこれから頑張ってくれ。あと20年間もあるんだろう! 今がすべてではない」

 監督室を後にした種市はもう泣いてはいなかった。監督の前で思う存分、泣いた。そして熱い言葉をかけられた。それを励みに2軍で結果を出すべく前を向いた。8月12日の初登板から1カ月と少し。1軍の夢舞台で見つけたいろいろな課題を克服するために練習を積み重ねることを誓った。

 「この1軍での6試合の映像データを沢山もらったので、毎日、飽きるぐらい何度も見直そうと思っています。課題は山ほどありますが、時間のある限り、克服していきたい。この課題を練習で生かしたいです」

 自慢のフォークは通用することが分かったが精度はまだまだ。それ以外にもボール先行型となってしまった投球。緩急のピッチング。内角、外角の使い分け。ローテーションの中での体調管理。メンタル面。様々な課題を思い返しながら種市はロッカー整理を行った。その背中はシュンと落ち込む背中ではなく前に進む若者の闘志あふれるものだった。

 普段は飄々(ひょうひょう)としていて感情の起伏を感じない若者が見せた悔し涙。目の前で滝のように流れ出た涙に触れた井口監督も本人と同じようにその悔し涙を脳裏に刻むつもりだ。

 「いつかね。あの悔しさ涙が生きる日が来る。アイツは20年、頑張るとオレに言った。純粋な悔しさと気持ちが大事。この想いが力になる。糧になる。今後につながる。そう思う。本当に日本一勝てる投手になって欲しい」

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 悔しさを力に変えることが出来る投手だ。1軍6試合での一番良かった場面として9月17日のイーグルス戦で島内宏明外野手をインコースストレートで見逃し三振に仕留めたシーンをその一つに挙げた。8月19日のイーグルス戦(楽天生命パーク宮城)の三回にはその島内にこん身のストレートを右中間にはじき返された。2点適時二塁打。悔しさを忘れずに挑んだこの試合で今度はストレートで見逃し三振に抑えた。打たれたら次は抑える。気迫のピッチングだった。

 「ライオンズの今井とかイーグルスの藤平とか同じ年の直接対決で負けた事もメチャクチャ悔しかったです。この悔しさを晴らすべくトレーニングをしたい。今は負けたけど次は負けない。来年やそれ以降も勝ち続けたい。そう思っています」

 若者を成長させるのは決して成功体験ばかりではない。悔しさもまた大きなパワーとなる。だから種市は指揮官の前で見せた涙を一生、忘れない。日本一勝てる投手になるための糧にとし、強くなる。プロ2年目、20歳。種市のプロ野球人生はまだまだこれからだ。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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