全国ネットで放映された「喜楽飯店」前を通過

続いて、田んぼから降りて、再び久留里街道と久留里駅の間の道を進みます。
その道中にも、街角にはいくつも井戸の姿が。
さらに、駅前でさりげなく姿を見せたのは何ともレトロ感いっぱいな「みゆき通り商店街」の看板。その下に、とんねるずのテレビ番組(2011年、フジテレビ)で紹介された「喜楽飯店」の看板も!
中華料理店らしいラーメンやチャーハンのお品書き(もちろん手書き)もずらり。思わずお店を覗いてみたくなりましたが、今回は井戸ネタに集中しましょう。

駅の周辺は井戸がいっぱい

久留里駅から上り方面へ少し歩いた線路沿いのJR敷地内にも、日本庭園風な井戸があります。ここも上総掘りで掘られたもので、石や植え込みがこんもりと配置された中に、「ししおどし」のような竹筒がちらっと見えて、そこから水が流れているようです。休日のため入口が閉鎖され、職員の方の姿も見えなかったため、門の外から望遠レンズで撮らせていただきました。

小春食堂裏手の井戸、掘削秘話

最後にお邪魔したのは、久留里街道沿いにある「きそば小春食堂」。
「銘水自家製」のお蕎麦や定食、ラーメン、丼もの、洋食系まで豊富なお食事メニューで知られる、創業40年超の老舗です。

その裏手に回って、お店のお母さんの案内で大きな井戸を見せてもらっていると、お隣のご主人が井戸の思い出を話してくれました。
「ここの井戸は250間(約500m)の深さ。70年前、高い足場で掘っていたよ。何年かかったかな、1年や2年じゃないと思う」とご主人。
「深くなればなるほど、作業の能率が下がるからね」と鶴岡先生。

さらにご主人は「掘っている途中でずいぶん岩が出てきて難儀したようだよ。掘り上げてから数十年後に一度、水が止まってしまって。何年くらい止まっていたか記憶が定かではないが、いつしかまた出てきたんだよね。それは最初に水を取ってた層じゃなくて他の、途中の層から取ったんだと思う。それまでは茶水が出てたのが、今度は真っ白なのが出てきたそうです」。
「あぁ、それは層が変わったんですね」と鶴岡先生。
「だから、今は何mから出てるのか正確にはわからない。私も小さい頃だったから、どこの職人さんが掘ってたかもわからないなぁ。おじさんが1人で一生懸命やってたけど、職人さんの仕事は一切、触らせてもらえなかった」
「その頃は今とは全然違うから、素人は全く手を出させなかったはず」と鶴岡先生。
上総掘りが国際貢献や地域の歴史・民俗技術の伝承活動である今、一般の老若男女が自由に体験できる時代になっていますが、かつてはプロの職人の仕事で、素人が足場に近寄るなど、もってのほかだったのでしょう。

現在、ご主人のお宅では井戸水を室内では使わず、外での洗い物などに利用し、この近隣の商店4軒が共同で使っているのだとか。
「以前は上からどんどん水があふれていた。今は、うちが使うと全部止まっちゃう。井戸掃除は最近やってないね。昔は協同井戸ですから、数ヶ月に一度はみんな出てきてやっていた。タンクの中を開けてね。水をいったん全部抜いて。元の水は流れたままで」とご主人。
残念ながら、水量は少しずつ減っているそうです。

厨房の自噴井戸

ちなみに小春食堂では、この井戸水を台所の流しに直接引いてありますが、常時、少しずつ流しっぱなしにしておかないと詰まってしまうのだとか。時には逆流してしまうことも。自噴井戸というのは温泉で言うところの「源泉掛け流し」、つまり流す先がないと、止めておくわけにはいかないようです。
せっかくなので小春食堂の厨房にお邪魔して、写真を撮らせてもらいました。
一見、ごく普通の流し、水道の蛇口に見えますが、立派な自噴井戸水!
久留里の街には当然、普通に上水道も通っていますが、こうして昔ながらの井戸水が暮らしの中に今も生きているのです。

桜のつぼみが膨らみかけた3月、駆け足で銘水の街を廻った井戸巡り。
盛大な雨に降られるも、後半は青空がのぞき、有意義なショートトリップとなりました。
井戸孔の底で掘り鉄管が取られて、挽回作業が中断中、という決して順風満帆とは言えない状況での小さな旅。
結果的に、この後で取りかかった挽回作業は奇跡的にわずか2回で完了し、めでたく掘り鉄管を奪還できたので、終わりよければ全てよし、とすることにしましょう。

写真は円如寺で雨に濡れた寒緋桜(カンヒザクラ)。
ソメイヨシノが開花する前に、ひときわ鮮やかな桃色で周囲を春色に染めていました。

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週刊ちばにっぽう 2016/05/21-5/27

5月21~27日の千葉日報オンライン掲載記事の中から、反響のあった記事、おすすめの記事などをご紹介します。


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袖ケ浦市郷土博物館に拠点を置き、国指定の重要無形民俗文化財に指定された「上総掘りの技術」の技術保持団体である「上総掘り技術伝承研究会」と、技術保持者である3代目・井戸掘り職人の鶴岡正幸がお送りする、上総掘りのお知らせチャンネルです。
千葉県の上総地方で誕生した伝統的な手掘りの深井戸掘り工法「上総掘り(かずさぼり)」。少人数の人力だけで、重機や電力を使わずに数百mの深さまで井戸を掘ることができるこの技術で、かつて新潟の油田や別府温泉なども掘られました。
現在では水不足に苦しむアジアやアフリカ諸国で、上総掘りの技術を活用した支援や国際交流を行う事例が増えています。
当会でも年に2回、JICAつくばセンターから海外の土木・治水系省庁の職員らを対象に、上総掘りの掘削体験と見学ツアーを受け入れています。
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