母校・桐蔭学園高の試合を見て「自分の原点を思い出すことができた」と話す鈴木

 悩んだ結果、車に乗り込んだ。秋晴れとなった10月23日。鈴木大地内野手は車のハンドルを握っていた。中央自動車道に入り、甲府南インターで降りた。約2時間のドライブ。目的地は山梨県内の小瀬スポーツ公園山日YBS球場だった。自分でチケットを買ったが入り口が分からずスタッフに聞き、ようやくスタンドに入ると、ちょうどシートノックが始まる時間だった。三塁側の最上段。そこから試合を観戦した。秋季関東地区高校野球大会準々決勝、桐蔭学園対佐野日大戦。鈴木は母校の後輩たちを応援した。

 「ずっと行こうかどうか悩んでいて。その日の朝まで決めかねていた。最後は奥さんから『悩んでいるなら、行ってくればいいじゃん』と背中を押してくれたことで、ようやく決意したんです」

 スタンドに座ってすぐにこの決断が正しかったことに気が付いた。いつもグラウンドでプレーをしている立場の男にとってスタンドから見るグラウンドの景色は新鮮だった。試合は8-1で母校が快勝し春の選抜出場が有力となった。「カッコいいなあ」。躍動する後輩たちの姿に思わず独り言が口から出た。

 「スタンドから野球を普段見ることがないので新鮮でした。一生懸命にガムシャラにプレーをしている選手たちの姿がとてもカッコよく感じました。キラキラと輝いていた。応援も盛り上がっていて本当に感動した」

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 いつしかスタンドで試合観戦をしながら、自問自答を繰り返していた。果たして2018年シーズンの自分の姿はチケットを買ってスタンドで見てくれていたファンの人たちにとってカッコいいものだったのだろうか。答えは否。後輩たちを応援する野球観戦は自分を見つめ直す時間に変わっていた。

 「打てなかったり、ミスをしたりしてクヨクヨしたり、自信がなくなり不安そうにプレーをしている自分の姿はきっとファンの人にとっては面白くなかっただろうなあと思いました。こうやって自分の足で遠くまで野球観戦に来て、自分でチケットを手に入れて、スタンドから見ていて、それを痛感しました。よく子供たちに夢や希望を与えたいと言うけど、試合観戦をしたこの自分の気持ちの高揚に、ああ、あれって試合観戦している人たちに、こういう気持ちにすることを言うのだろうなあと思いました。今年の自分のプレーに心が動かされた人は少ないと思う」

 今季は3年連続5度目の全試合出場を果たし、打率2割6分6厘、8本塁打、49打点。成績こそ昨年と遜色はないものの試合途中に代打を出されることが増え、ここぞというチャンスで凡打をするなど不完全燃焼の苦しい一年となった。いつしかトレードマークの笑顔は消え、下を向くことが多くなっていた。シーズン後、全試合出場したこともあり秋季練習と秋季キャンプへの参加の免除が決定。首脳陣からは「自分で考えて、しっかりと調整をしてほしい」と言葉をかけられた。

 一人、今年の欠点を補うように自主練習を行っていた時に母校が順調に勝ち進んでいるという一報を耳にした。練習をするか、めったにない機会なので、ここは気分転換を兼ねて試合を見に行くべきか。導き出した先に答えはあった。

 「秋季練習が免除だったから見に行くことができた。行って自分の原点を思い出すことができた。プロでやれている幸せも感じたし、自分がどういう姿をスタンドにいるファンに見せないといけないのかも気付かされた。今年は弱い自分に負けていた。来年はカッコいい自分を見せたいと思いました」

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 帰りの車中。そこには前向きな気持ちを取り戻した鈴木がいた。行きと同じ中央自動車道。同じ景色のはずだが不思議とまったく違って見えた。秋の夕焼けは、なんともいえないほどきれいで身に染みた。来る2019年シーズン。新たに選手会長に就任した背番号「7」は奮い立つその姿でファンの心を動かす。もう下は向かない。ただ上だけを見つめ、上を目指す。スタンドで見届けるファンをプレーで魅了する。秋の空に鈴木は誓った。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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