大きな背中で全てを受け止め、来季は日本一を実現する

 年の瀬の都内に伊東勤監督の姿があった。ラジオ番組のスタジオ生出演を終えると、帰路についた。これで年内のすべての公務を終えた指揮官は寒空の下、ジャンバーを羽織ることもなく歩き出した。31年ぶりとなる2年連続のAクラスとなった。ただ、指揮官はまったく満足な思いはしていない。だから、シーズンを振り返るインタビューでは必ず悔しさを口にした。

 「不本意とは言わないまでも、理想とはかけ離れた内容だった。最後に勝てなかった。それがすべて」

 順調な滑り出しだった。チームは7月まで好位につけた。ただ、徐々にチーム全体に疲れが、にじみ出てくる。中継ぎ、抑えの投手が次々と故障で離脱した。緊急事態だった。誤算続きの日々も指揮官はあえて表情には出さなかった。「一年間、山あり谷あり。いい事は続かない。そこは助け合う。それがウチの良さ」。若い選手の多いチームにハッパをかけ続けた。必死にやりくりをしながら、選手たちを励ましながら少しずつゴールを目指した。結果的には、踏ん張って、なんとか3位を死守した。それが実情だった。

 「あそこまでケガ人が出るとはイメージしていなかった。それがまた野球の怖さ。そんな状況の中でみんな必死にしがみついて、あの状況でAクラスに残れた。そこの点は、まあ良かったかなあ」

 決して満足はしていない。ただ、歯を食いしばり、必死に食らいつく選手の姿勢は評価してあげたかった。来年につながる光明を感じた部分だ。

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 監督は孤独だ。どんな逆境の中でも一人で決断をしなくてはならない。苦境にも最後に答えを出すのは自分だ。ベンチではどんな苦しい時も悠然と構えなくてはいけない。負ければ、責任を一身に背負う。それでも弱音を吐いたりはしなかった。それはライオンズ時代、初めて監督に就任した際に、大先輩からもらった手紙が原点となっている。

 「監督に初めて就任したばかりの12月ぐらいだったかな。熊本工業高校の大先輩である川上さんから突然、自宅にお手紙をいただいた。長文だった。いろいろな事が書かれていた。ありがたく何度も拝読させていただいた」

 直筆の長文をじっくりと読んだ。郷土の英雄で、日本の誇る大監督である川上哲治氏から頂戴した直筆の手紙に背筋が伸びる思いがした。そして、ある部分が強烈な印象として残った。

 「監督業は大変です。体にはくれぐれも気をつけてください。そして奥さんをくれぐれも大事にしてください。監督の奥さんは本人よりも神経を使います。だから、奥さんには優しくしてあげてください」

 達筆な字で書かれたその事は、ズシリとした重みのあるものだった。それからずっと、その事を片時も忘れたことはなかった。「監督は孤独ではない。嫁も闘っている」。伊東監督はそう自分に言い聞かせて最前線でタクトを握り続けた。いつも最後の力を振り絞る時は、自分を見守る家族のことを思った。そしてわざわざお手紙を書いてくださった大先輩のことを思い返した。

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 「大変なのが仕事。誰でも、どんな仕事でも大変だよ。大変なのはストレスをぶつけるところがないことぐらいじゃないの」

 指揮官はそう言って大きく笑った。つかの間のオフには妻が大好きなゴルフにいくなど、なるべく一緒の時間をつくるように意識した。そしてあっという間に年の瀬を迎えた。年が明ければ、もう戦いは本格化する。チームの方針を定め、動き出す。2月の春季キャンプでは新たな戦い方を選手たちに細かく指示を出さなくてはいけない。

 「優勝しないとダメ。日本一にならないとね。Aクラスで満足をしていては絶対にダメだよ。そのためにはオレもコーチもスタッフも選手も限界に挑戦をしないといけない。自分の限界と思ったその先に栄光が待っている。新しいなにかが待っている」

 寒風吹きすさぶ中、指揮官は熱く語り続けた。一通り話し終えると、きびすを返した。年末の都内は人であふれていた。大きな背中が雑踏の中に吸い込まれていった。チームのため、ファンのため、家族のために。それは、すべてを背負う男の背中だった。少しばかり充電期間を終えると限界をぶち破るべく、突っ走る毎日が始まる。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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