多彩なイメージを喚起するトゥオンブリーの写真作品が並ぶ会場=川村記念美術館

米国出身の現代美術家、サイ・トゥオンブリー(1928~2011年)の作品を紹介する展覧会「サイ・トゥオンブリーの写真-変奏のリリシズム-」が、DIC川村記念美術館(佐倉市)で、8月28日まで開催されています。

トゥオンブリーは、日本では馴染みがないかもしれませんが、20世紀美術を代表する巨匠です。2015年に開かれたニューヨークのサザビーズ主催オークションでは、素人目には落書きのようにも見える作品(「無題」1968年)に約86億円という驚愕の高値がつき話題になりました。

意味があるのかないのか分からない、ぐるぐる~っとか、だらだら~っとか、ぐちゃぐちゃっとか、ギザギザに引かれた線や、数字や文字が並べられていたりして、頭の中が「???」で埋め尽くされそうです。

なぜ、この作品に大きな芸術的価値が見いだされているのか。

同美術館の学芸員、前田希世子さんにお話を聞きました。

 ◇ ◇ ◇

腕の動きで描いている

《マグダでの10日の待機》 1963年
鉛筆、クレヨン、油彩、カンヴァス 100x104.1センチメートル
国立国際美術館蔵
©Cy Twombly Foundation

【前田希世子さん】
まず、1963年の「マグダでの10日の待機」という絵画を見てみます。

「無意識に描かれているみたい」というのが重要なんです。電話中に見てるけど見てなくて、紙に何か模様のようなものを書いているような。

人の顔を描こうとかしているわけでなくて、手の動くままに、何となく見ずに描くというのがポイントです。トゥオンブリーは、もちろん見て描いているのですが、腕を動くままに動かすというような、目の専制を逃れる、ということをやっています。どれだけ人間は目に管理されながら物を描いたり線を引いてきたのか?ということなんですよ。

ちょっと前の芸術家たちは、頭の中にパッと思い付いたことを、速記的に描いていくというような実験をしていました。

トゥオンブリーもそのことは知っていて実際やろうとしましたが、頭の中に思い描いたものを紙に写すことよりも、彼が頼りにしたのは、紙と持った鉛筆なんです。

鉛筆が絵に置かれた時に軽い抵抗があります。紙と鉛筆の抵抗であったり反発であったりする軌跡で、線や画が出来るということに気がついて、それを絵画作品にしていったんですね。

描かれた作品は、目よりも腕の動きで描いているんです。

目に支配されない絵画 新たな流れを作った!

《無題》 1968年
家庭用塗料、クレヨン、カンヴァス 200x259センチメートル
DIC川村記念美術館蔵
©Cy Twombly Foundation

今回展示している、いわゆる“ブラックボードペインティング”(黒板絵画)という作品群の中の、1968年に描かれた「無題」という作品は、グレーに塗られたカンバスの上に、白いクレヨンで描かれています。

グレーの塗料が生乾きのまま上からクレヨンで線をひいています。生乾きなのでクレヨンがぐぐっと沈み込むわけです。そういう抵抗、クレヨンが絵の具を突き抜けていくような感覚を大事にしながら制作する。手から繰り出される絵画というのが、トゥオンブリーが評価される一つの理由なんですね。

つまり目に支配されてしまうと、お花を描かなきゃとか、まっすぐな線を引かなきゃとか、意識が先行してしまいがちです。

幼児の落書きのようと言われてしまうんですが、手の動きだけで作り上げていくという彼の特徴が非常に評価されています。

絵画においては、ある時期から平面性というのがとても重要で、それをどう捉えるか探求や模索をしていき、うまく進むと美術史の流れの中で評価されます。そういった意味で、トゥオンブリーも新しい絵画の流れを作ったわけです。

一方、写真作品は・・・

《チューリップ》 1985年
カラードライプリント、厚紙 43.1x27.9センチメートル
個人蔵
©Nicola Del Roscio Foundation, Courtesy Nicola Del Roscio Archives

写真展をやってみて、私が確信を持ったのが、トゥオンブリーという人は絵画だけでは語り尽くせないということです。

基本的には全てポラロイド写真で撮影をして、約2.5倍くらいに大きく引き伸ばして紙に印刷するひと手間をかけているんですよ。

元のものをぼんやりさせる、おぼろげにする、元のものが何であるか分からない作品として提示しているというのが特徴です。

それは、敢えて焦点を絞っていないことで、見る人が、想像を膨らませたり、考えたり、または別のものを想起させたり、余白が非常にある写真と言ったら良いのかもしれません。

小説のように具体的に説明するというよりは、詩や俳句のようにポンと印象的に言葉を入れて、あとは読む人に想像させることを視覚的にやっています。見る人が違えば、その世界はまた違うものになるということではないでしょうか。

トゥオンブリーは、「ものの流転をみせているのです」と述べていました。彼は流転するものをとらえて提示することを指針にしています。例えばチューリップをとらえても、それが彫刻作品に見えたりする。また、彫刻作品が彫刻ではなくて別のものに見えていくという視覚的な転換、置き換えを試みています。

《キャベツ》 1998年
カラードライプリント、厚紙 43.1x27.9センチメートル
個人蔵
©Nicola Del Roscio Foundation, Courtesy Nicola Del Roscio Archives

《彫刻部分》 2000年
カラードライプリント、厚紙 43.1x27.9センチメートル
個人蔵
©Nicola Del Roscio Foundation, Courtesy Nicola Del Roscio Archives

 ◇ ◇ ◇

展示は8月28日まで!

な、なるほど~!(汗)

前田さんありがとうございました!

川村記念美術館の「サイ・トゥオンブリーの写真-変奏のリリシズム-」展は、写真作品が100点展示され、見ごたえ十分です。

写真作品の他に、絵画、本邦公開は四半世紀ぶりとなる彫刻、ドローイング、版画の作品も展示されており、一貫した思考で作り上げられたトゥオンブリーの作品をぜひ体感してみてください!

関連する記事

上総掘り☆掘削動画〜その1から4〜

2015年夏、袖ケ浦市郷土博物館敷地内「水のふるさと」の屋外展示足場にて、掘削活動の様子を録画しました。


   上総掘りチャンネル

上総掘り★井戸巡り報告~その弐/驚愕の柱状図&手打ち蕎麦に舌鼓

今週末の活動は4月2日(土)、そではく現場にて挽回作業を行います。


   上総掘りチャンネル

ちばとぴ!編集部チャンネル

ちばとぴ!編集部の公式チャンネルです。千葉情報のまとめの他、編集部オリジナル記事、編集部からのお知らせなどを配信いたします!

当サイトの事務局的な動きもしております。

ランキング

人気のある記事ランキング

【カメラ部】投稿写真ギャラリー 2017秋季

毎月1名様限定、投稿写真をTシャツに特別加工してプレゼント!