東美幸さんの“神の手”で卵を割るところ=6月20日、生浜高校

世界で初めて殻なし鶏卵からのふ化に成功した千葉県立生浜高校(千葉市中央区)の生物部が今年5月、NHK番組で紹介され、国内外メディアから取材が殺到しています。

2012年に成功した画期的な実験が再注目された格好。生物部顧問の田原豊教諭(63)が約30年間試行錯誤してきた研究を、教え子たちが初めて成功に導いた背景には“神の手”を持つ1人の生徒の存在があった-。

そんな情報を耳にした「ちばとぴ!編集部」は早速同校へと足を運びました!

ラップ法

4〜5日目の培養卵の様子(田原豊教諭提供)

出迎えてくれた田原教諭によると、実験内容は次の通りです。

まず、市販の食用有精卵を買ってきます。次に殻を割り、中身をプラスチックカップにラップをかぶせて作った人口容器に入れて、保温庫で約3週間温め培養します。

すると、3日目から心臓の鼓動がはっきりと見え、約21日で孵化します。

保温庫で培養中の卵の様子。容器の中でうごめいている小さな生命は神秘的

簡単に説明してしまいましたが、田原教諭が約30年間失敗を繰り返した研究であり、生物の授業の教え子たちや生物部員たちがいくつもの卵を割って試行錯誤の末にようやく成功させた実験なのです。

特に、透明なラップで包むこの「ラップ法」は、全方位から卵の変化を観察するには有効ですが、ヒヨコを誕生させるのは不可能と言われてきたそうですから快挙と言えます。

“神の手”現る

田原教諭(写真左)と東さん=6月20日、生浜高校

成功の立役者の一人が、彼女が殻を割ると不思議とふ化率が高まるという“神の手”を持つ、12年度卒業生のOG東美幸さん(22)です。同年度の千葉県知事賞を受賞した論文「殻無し卵孵化への挑戦!-誕生-」作成メンバーで、社会人となった現在も時々恩師を手伝いに来校しています。

なぜ、ふ化率が高くなるのか理由は解明していないそうですが、何はともあれ、彼女が殻を割るとヒヨコがよく生まれます。

東さんの手のひら

研究に使う食用有精卵

次々と人口容器に卵を割り入れる東さん

卵を培養すべく人口容器ごと保温庫へ

「ゆたか」誕生!

12年6月、初めて実験成功したあの日、田原教諭と生物部員たちは徹夜で介助し、世界初の殻なし卵ふ化が成功する感動の瞬間を迎えました。「ピーピー鳴いている!」「かわいい!」と叫び、涙を流し喜ぶ部員たち。田原教諭は「これまでの恨みを晴らすかのような怖い顔で生まれるかと思ったら、ピーピーと可愛らしかった。許されたような気がした」と当時を思い起こし語りました。

このヒヨコは教諭の名前にちなみ「ゆたか」と名付けられ、現在も元気に飼育されています。

ちなみに「ゆたか」も、東さんが割卵して誕生したヒヨコです。「東さんが毎日卵を割ってくれたから、孵化に成功することができた」と感謝する田原教諭に対し、「美幸様と呼んで!」と冗談で返す東さん。受賞をきっかけに、6人だった部員も13人に倍増し、ますます活気づく同校生物部。

田原教諭と生物部員たちは今後、他の学校でも手軽に実験できる教材化を目指して実験映像を作成する予定のほか、ウミホタルやウズラなど他の生き物でも研究を進めるそうです。

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