サンフランシスコ・ジャイアンツのジョニー・クエト投手のTシャツを着る大嶺祐太

 試合後、いつも同じTシャツを着ている。投げた時も投げなかった時も。抑えた時もそうではなかった時も大嶺祐太投手はこのTシャツを着てウエート場に向かうのが決まりだ。サンフランシスコ・ジャイアンツのジョニー・クエト投手。MLBの個性派右腕として100勝以上を挙げるスター選手がデザインされたシャツである。

 「たまたま動画でクエト選手がウエートをしている姿を見たんです。それからですね。刺激を受けて。積極的に取り組むようになりました。元々、ウエートはしていたけど、アメリカで行なっているトレーニング方法などを担当の方に聞いて新しいやり方や考え方を勉強しています」

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 なにかを変えなくてはいけない。昨年1勝に終わった悔しさを胸に挑むシーズンで貪欲にアンテナを張り巡らしていた中で現役メジャーリーガーが自身のトレーニング方法を紹介する動画と出会った。それは真剣であり、激しくもあり、興味深いものだった。偶然にも今シーズンからサンフランシスコ・ジャイアンツでトレーニングを勉強した渡辺亮氏がコンディショニング担当としてチームに加わっていた。動画を見た翌日。球場入りすると真っ先にトレーニングルームに直行しクエト投手のこととメジャーのウエート方法について聞いた。興味深い話ばかりだった。「やってみたいです」。質問を終えると渡辺コンディショニング担当に想いの丈をぶつけた。「じゃあ、まずは気持ちからだな。これをあげるよ」。そう言ってロッカーの奥から1枚のTシャツを手渡された。クエト投手がデザインされているものだった。サンフランシスコ・ジャイアンツ在籍時にもらった大切なものを譲ってくれた。思いがけないありがたいプレゼントだった。早速、着替えるとマシンと向き合った。人の気持ちとは不思議なものだ。それを着るだけで気持ちが高まった。今までにない高揚感を感じながらの時間を過ごすことが出来た。

 それからだ。定期的に自分の体と向き合うようにした。ナイターの後でも、どんなロングリリーフをして疲れた時でもスケジュールを崩さない。クエトのTシャツを着ながらウエート。それがお決まりとなった。ウィークポイントと言われた肩回りの筋肉の強化と体幹を中心にいろいろな動きに取り組んだ。ヒーローインタビューを受けた直後もすぐにいつものTシャツに着替えるとマシンと向き合っていた。そしてプロテインを飲んで体のケアへと移る。そんな毎日を過ごしている。

 「今年はキャンプインから覚悟を持って取り組んでいます。覚悟を持って毎日を悔いのないように過ごしてシーズンを最後まで戦いたい。悔しさを口にすることは誰だって出来る。そうじゃなくて、行動に移して結果を出さなくてはダメだと思っています」

 飛躍の1年と位置づけていた昨年は14試合に登板をして1勝3敗、防御率6・49。一昨年は8勝を挙げ、期待されて臨んだ一年は悔しさだけが残る形となってしまった。そしてオフに待っていたのは背番号「11」から「30」への変更だった。それでもあえて前向きに捉え、心の火を灯す材料とした。「見返せるようにしたい」。悲壮な決意で日々を過ごした。普段は肩を休める12月も寒風吹き荒れるロッテ浦和球場のブルペンで投げ込んだ。1月も故郷・石垣島で体を苛め抜き開幕一軍の切符を手に入れた。それからも自分のプラスになるものがなにかないか。貪欲に探す姿勢を続けている。色々な人に話を聞き、片っ端から本や映像を見入った。その一つがクエト投手の動画だった。それをキッカケに行動が大きく変わりプラスに運んでいる。

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 プロ11年目の今季はこれまで16試合に登板をして2勝1敗。防御率2・73。先発の機会はないものの中継ぎとして様々な場面で登場し、しっかりと仕事をこなしている。同点の場面。負けている状況。どんな時でも早めにブルペンで肩を作り自分の仕事を遂行することに集中し腕を振り続ける。思えばマリーンズの今季初勝利はこの男。4月5日、本拠地でのファイターズ戦で3番手として登板してのものだった。

 「どんな場面でも1軍で投げさせてもらえるのは嬉しい。結果を出して、積み重ねてファンの方に認めてもらえる存在になりたいと思っています」
 ホーム6連戦を終えた日曜日の試合後。大嶺祐太がいつものTシャツを着て汗だくになりながらロッカーに戻ってきた。強い覚悟と闘志で挑んでいる1年。その背中は日に日にたくましさが増している。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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