クラブとして過去最低の順位に終わった2018シーズン。
それでも、クラブはフアン エスナイデル体制の継続を決意した。
高橋悠太GMに、その背景とシーズン総括を聞く。
【準備ができていなかった~7連勝の残像~】
インタビュー・文=細江克弥


―― 2018シーズンが終わりました。成績は14位。この結果について、まずはGMの見解を聞かせてください。


高橋
結果については、率直に悔しいですね。そして応援してくださっているすべての方々に申し訳ないという気持ちです。

シーズン当初、チーム全体に慢心があったのは事実です。昨シーズン7連勝で幕を閉じ、プレーオフに進出したことで、フロント、首脳陣、スタッフ、自分自身を含めて多くの人が勘違いしました。昨シーズンがよいカタチで終わった故のものですが、6位だった現実と向き合わなかった気がします。昇格した名古屋に敗れたグッドルーザーではありましたが、何も成し遂げたわけでもないのに、チャンピオンのような振る舞いで2018シーズンのスタートラインに立った気がするのです。

僕の仕事は「補強」が大きな割合を占めますが、自身を振り返ると、そこもうまくいかなかったです。昨シーズンの失点の多さという反省点から、最終ラインの補強が昇格争いの鍵だと考え、センターバックを中心に補強しました。ところが失点は減らずむしろ増えました。サッカーは攻守が一体で、ポジションごとに切り取れるようなスポーツではないので、最終ラインの補強と失点数が必ずしも直結するとは限りませんが、新戦力をうまく融合できず、課題を克服しきれませんでした。


―― 確かに、外国籍選手を含めて、なかなか戦力が「ハマらなかった」というか「定まらなかった」という印象を強くうけたシーズンでした。新戦力の出場率が低かったというデータもあります。


高橋
その通りだと思います。新戦力が本当の意味で「戦力」として定着したのは、最後の10試合くらいでした。ケガなどのアクシデントもありましたし、「うまくハメることができなかった」という「使う側」の問題があったことも否めないです。昨年一緒に戦った既存の選手についても、昨シーズンと比較してパフォーマンスを落としたり、数字的な結果を残せなかったりした選手もいました。そうしたいくつかのネガティブな要因が重なって、順位に表れてしまったのだと思います。「戦力」に対する見込みが甘かったということです。

選手の出場率という意味では、新戦力かどうかにかかわらず、サラリーの高い選手の出場率が高いことが、すなわち「予算の中で補強する」僕らの仕事における評価といえます。費用対効果という側面からですね。これに加えて、「サラリーの低い(例えば若い)選手の出場率が、『意外にも』高いというサプライズがある状態」がベストです。ご承知の通りで、そのような、理想な状態にすることができませんでした。


―― 夏の補強は、うまくいったのではないでしょうか(横浜F・マリノスから下平匠、松本山雅FCから工藤浩平を獲得)?


高橋
一定の評価はできると思います。昨シーズンも夏の補強では、チームの骨格となる選手を獲得できましたが、昨年同様に足りない部分を補えることはできました。ただやはり、遅すぎました。冒頭に申し上げたような慢心が準備不足を招かせましたし、昨シーズン終盤の良い流れの残像が、戦い方を頑固にさせ、柔軟な対応を鈍らせて取り返しのつかない状況にさせてしまいました。


―― 伺っていると、「昨シーズンの一定の成果が今シーズンの進歩を鈍化させた」ように感じてしまうのですが、抜本的な改革で成果をあげようとするのであれば、3年、5年という期間での目的達成で十分で、それが「ノーマルなスピード」だと個人的には思うんですよね。例えば「3年という期間で結果を出す」という考え方にたてば、「1年目6位、2年目14位、3年目2位」と「1年目3位、2年目3位、3年目2位」とは、大きく変わらないと思うんです。サポーターの皆さんには「それは違う!」と言われてしまうかもしれませんけれど。つまり、「2年目で実を結ぶ」と考えるほうが甘かったんじゃないかなと思うわけです。


高橋
そうですね。そういう観点からも2年目のスタートラインで、自分たちの位置についての認識も完全に誤っていたのかもしれません。だからまさに慢心なのです。総じて、心の準備ができていなかったと、振り返っているところです。


【はっきりしている~来シーズンの補強~】
―― 準備不足。そしてそれが招いた問題点の修正に時間を要したのですね? しかも、ひとつひとつの修正も簡単ではなかった?


高橋
そうですね。昨シーズン、1年かけてチームに浸透したことが、戦力を多少入れ替えてもしっかりとワークするという考えも甘かったです。ボムヨン(金範容)や高木利弥の抜けた穴は想像以上に大きかったし、ヤマト(町田也真人)の戦線離脱も予想外に状況を難しくしました。そういう意味で「個」に依存していた部分が、実は大きかったことも再認識させられました。それは、ピッチの中でも外でもです。

「個」の重要性を再認識しつつも、サッカーはチームスポーツということも忘れてはならないなと、「組織」のあり方も考えさせられたシーズンでした。ほんの少しバランスが崩れたり、意思統一にズレがあったりするだけで、チームは崩れてしまいます。
わかりやすい戦術を採っているチームほどその傾向は、顕著に表れます。崩れかけたとき、修正しないとならないときに、監督やコーチングスタッフからのアプローチ、あるいは選手間のコミュニケーションで、時間をかけずに解決できるようになると、チームとして1段階上のステージにいけると僕は思っています。
今シーズンの最後の最後に修正することができて、ようやくそのステージが見えてきました。その実感が、いまはあります。



―― その実感は、来シーズンのチーム作りにつながるのでしょうか?GMの頭の中には、来シーズンのチームが具体的にイメージできているんですね?


高橋
少なくとも、補強に関しては、ハッキリしています。単純にピッチで結果を出すという意味だけの戦力補強ではなく、総合的なチーム力をあげる補強をしたいと思っています。ピッチの上の補強だけでなく、長いシーズン中に選手間の意思統一を図る上での補強ですよね。ピッチに立つ11人だけではなく、全体として、その選手個々人のチームに対する関わり方がとても大切な要素になると思っています。

例えば、昨シーズンまでチームの引き締め役としても気配りしてくれていた羽生直剛や大久保裕樹が引退して、ムードメーカーだったボムヨンと比嘉祐介が、今シーズンはチームを去りました。オフ・ザ・ピッチでもポジティブな存在感を出してくれていた彼らがいなくなった影響は、少なからずあったと考えています。ピッチ上の補強に終始するばかりで、シーズンを通した総合的なチーム力を強化することができませんでした。結果が出ないことが続いたために、今シーズン浮き彫りになった問題点でした。来シーズンに向けて、その部分の補強を間違いなく行うつもりです。


【継続という方法を選んだ~指揮官続投の理由~】
―― ファン・サポーターなら誰もが気にしていると思いますが、結果が出ない中で、フアン エスナイデル監督の続投を決めた理由は?


高橋
結果を出したり、目標を達成したりするためには、大きく2つの方法があると考えています。ひとつは、戦力や戦い方を変えて最善策へ導く方法。もうひとつは、既存の戦力や戦い方を維持したまま、問題・課題に対応する方法です。
どちらが最善かとは、一概に言えませんが、いまのジェフがやるべきことは、後者であると思っています。監督も選手も、過去に何度も入れ替えてきましたし、その都度、その戦力に合った戦い方を探ってきました。でも、結果としてはほとんど何も積み上げることができませんでした。
また、もう少し現実的な問題として、いまのジェフは人件費や強化費に、ものすごいアドバンテージがあるわけではありませんから、戦力や戦い方を変えずに、露呈した問題に対処する方法のほうが、現実に即していて、なおかつ勝利に近づく可能性が高いと僕は考えています。スタイルを確立させるという意味でも、もう1年、同じ監督に任せたいという思いなのです。


―― とはいえ、今シーズン成績が伴わない状況下、監督を替えるということも、「現実的な選択肢」としてあったのではないですか?


高橋
それは…。監督交替の議論はチーム内でありました。申し上げたように、「替えない方法」がチーム事情にあっているという基本的な考えのもとチーム運営していますが、他ならぬ僕自身が「負け方」や「選手たちの表情」から「替えたほうが良いのかもしれない…。」と思う瞬間がありました。


―― でも替えなかった?そして来シーズンも継続という選択をした?


高橋
そうですね。監督自身が、チームの現状や抱えている問題点を受け入れて省みることができるか、選手の多くがこの監督についていけると感じているか。この2つが「替える」かどうかの大きな判断基準だと思っていて、両方ともダメであるなら、たとえシーズン中であっても監督交替に踏み切らなければならないですよね。
前田社長も交えて議論しました。でも、あらためて選手や監督と話をしてみて、そういうタイミングではないと確信することができたのです。「この状態なら改善できる」と考えることができました。


―― つまり、監督交替の理由となり得る「選手と監督の関係」も「監督自身の考え方」も、決してネガティブじゃなかった?


高橋
課題はたくさんあるけれど、すべてが「解決できる課題」だと感じました。だから、シーズン途中で替えることも選択しませんでしたし、シーズン終了後に3年目の指揮権を託すことにしたのです。僕たちは「替える」ことでなく、「変わる」ことを選んだのです。


―― めちゃくちゃ底意地の悪い聞き方をしますけど、決して“意地”になって監督の続投を決断したわけではないんですね。


高橋
もちろん。そこはドライなくらいに客観的な視点を持っているつもりだし、僕自身、そういうネチネチしたタイプではありません。


―― なんとなく知っています(笑)。


高橋
もちろん、前田社長も同じですよ。自分たちの立場を守ろうとする気持ちは全くないし、ただジェフというクラブに対する思いしかない。


【加速させたい~来シーズンへの思い~】
―― 解決できる課題があるにせよ、前提として、フアン・エスナイデル監督に対する信頼はもちろん変わっていないんですよね?


高橋
それは、面と向かっていろいろと話す上で、監督としてのフアン自身もこれからさらに変わっていける、監督としてもっと成長できる、と感じました。日本での2年という時間をかけて、日本のサッカー、日本人のサッカー、J2のサッカーについて、あるいは日本人について、フアンは彼なりに理解を深めていきました。この段階でもなお、「自分のやり方を変えるつもりはない」「ポリシーを変えるなら負けるほうがマシ」と言う監督もいるかもしれません。でも、フアンは「変わる選択」をしました。

彼は、日本での経験を踏まえて、より多くの情報を手に入れよう、より多くの引き出しを持とうとする考え方を持つようになりました。「結果」に直面して、クラブに関わるすべての人が反省しなければならない中で、彼も彼なりに、監督としてしっかりと反省しているのです。
クラブとしては全く別の選択肢もありました。GMを替える、監督を替える、選手を替える…。戦力・戦い方を変える方法で、新たにスタートしても、もしかしたら、この2年間とはまた別の問題が浮上して、同じように修正するための時間がかかってしまうかもしれないのです。それをクラブとして「避けなければならないリスク」と考えるから、僕も、フアンも、つかんだ手応えと反省点を活かして、3年目のシーズンに向かおうと。前述したように、本人と前田社長とは常に議論をしていましたし、衝突もしましたが、その変化が確認できたから継続を決断したわけです。


―― 過去を悔やんでも仕方がないと割り切ってポジティブに考えれば、1年目、2年目と時間をかけて修正点を探ってきたことで、「今度こそ準備が整った」と言えるかもしれません。高橋GMが就任時に思い描いた中長期的なプランにおいて、現状をどう捉えるかということだと思うのですが。


高橋
当時、僕らが描いたマイルストーンの書き換えが、思ったよりも多くなっていることは間違いありません。その多さに直面して、歩くスピードが遅くなってしまっていることも事実だと思います。
ただ、その歩調は、ジェフが多くのファンに応援される歴史あるクラブが故のものでもあるとも僕は感じているのです。歴史や伝統の重さが動きの重さにつながっていて、この数年でそのようなクラブの特徴に何度も直面してきました。だから自分がもっと前に出て、いろいろなことに目を配って、変化させないとならないと思っています。

そう、この2年を経て、迎える来シーズンは、歩くスピードを加速させなければならないシーズンですね。クラブの歩みも自分自身の歩みも。絶対に結果をださなければならない1年になります。結果をだすためにも、クラブとしての確かな成長も示さなければなりません。
応援してくださる皆さまには、「引き続き力を貸してください。」としか言えません。与えられた限りある時間のすべてを注いで、全力で来シーズンを迎えたいと思います。

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