そこは、かつての繁華街の中心でした

 JR東金線と並行している旧国道沿いは、いまはかつての賑わいは衰え、南北に長く続く商店街を端から端まで買い物をして歩いた思い出のある人も少なくなりました。商店街としての連続性は無くなって車の往来ばかりが目立つようになりました。それでも老舗の商店主らが中心となって、地域の賑わいの火を消さないようにとさまざまな活動をしています。

 かつての東金の町の中心といえば、県内随一の書籍販売を誇った多田屋書店の本店周辺でした。100年前、周囲には町役場や郵便局の本局、税務署などがありました。やがて駅を挟んで反対の東側が開発され、バイパスができ大型商業施設が出来ると衰退が顕著になっていきました。多田屋書店は十数年前に廃業し、通りにあった各銀行の支店も東側に移転し、いよいよシャッター通りと化していきました。

もうひとつの国登録有形文化財建物『多田屋本社屋跡』

もうひとつの国登録有形文化財建物『多田屋本社屋跡』

この建物はもともと税務署として建てられたものでした。

ランドマークを交流拠点に

 多田屋本社屋の建物はかつての税務署跡です。また、書店の脇にある石の外壁が特徴的な建物はもともと煙草の専売所で、その後、多田屋の書籍販売に使われたのち、洋食屋、喫茶店として使用されてきました。この二つの建物は1999年に国登録有形文化財になりましたが、ながらく空き家の状態が続き、老朽化も激しいことから一時は解体も検討されていました。

 まちのランドマークともいえるこれらの建物を、地域の交流拠点にしたいと、所有者をはじめ商店街の有志の仲間が折に触れて改修・清掃をしてきました。商店街ではライブイベントや映画の上映など様々な企画で旧多田屋に来て昔を懐かしんで貰ったり、海外からの来訪者に歴史情緒ある雰囲気を楽しんで貰ったりして建物の活用をしてきました。声を掛け合ってNPOをつくり、旧商店街の町並みの文化的価値を訴えるイベントやシンポジウムを主催したりするなどして、さまざまな発信もしています。しかし、そのいっぽうで、古い建物を維持することの難しさも実感しています。
 改修工事にはたいへんな費用もかかるし、維持費もばかにならない。さまざまな試算をしたり、補助金頼みのプランを練ってみたりもしてきたが、いずれも持続可能とは言いがたいものでした。

国登録有形文化財『多田屋本店あと』

国登録有形文化財『多田屋本店あと』

こちらはもともと煙草の専売所でした。わきの通りの突き当たりに、もうひとつの国登録湯計文化財建物『多田屋本社あと』が見えます。

 道路に面した、「サントス」の愛称で親しまれている建物は見学の希望者も多いものの、常駐する人がいないためにいつも締め切っていて、イベントの当日か、そのために夜な夜なミーティングをしたりする以外は中を覗くことすらできません。いつでも見学することが出来て、人が集うようにするためには、飲食店として賃貸するのがいいだろうとは言われてはいたのだけれど、水回りはおろかトイレもない建物の改修工事にいつ、誰が着手するのか、話はなかなか前に進みませんでした。
 そこへ、一般社団法人『地域おうえんサポーターズ』の有志のグループが『サントス』を利用して交流拠点を作りたい、と企画を持ち込んできたのが昨年の暮れの話。『地域おうえんサポーターズ』では、計画中だった茂原駅付近の商店街再生のためのアイデアを急きょ路線変更して、『サントス』に集まった商店街有志NPO会議の席で、この文化財建物を拠点に地域おこしを仕掛けたいと提案をもちかけました。
 もともとここを交流拠点にしてランドマークを復活したいとさまざまな取り組みをしてきた商店街のメンバーらにすれば願ってもない話でしたが、あまりに勢いがあって聞こえがいい話だったので、戸惑いは隠せませんでした。

待望のトイレができる!

待望のトイレができる!

写真は「地域応援サポーターズ」H.S.ホームズの本間さんから工事の説明を受けている東金商店街連合協同組合の理事長の本田さん。

想いがどんどん加速して、ついに着工

 『地域おうえんサポーターズ』は、昨年一般社団法人として設立された団体で、近隣のさまざまな業種約80社の事業主らで運営していて、建築関係の会社もあれば、中には地元の人なら誰でも知っているような人気の飲食店もメンバーに加わっています。

できる人ができることを

できる人ができることを

工事もいろいろな人が入れ替わり立ち替わり手伝って進みました。

 「桜の咲く時期にはオープンしたいね」そんな話をしていたかと思うと、みるみるうちに出店の計画が出来あがり、『地域おうえんサポーターズ』の有志の人たちが設備工事や内装工事の作業に取りかかっていきます。行政にも、補助金とかにも頼らず、思いのある事業者らが部材資材や家具をはじめ、さまざまなノウハウや好意を持ち寄ります。建築関連のメンバーが中心となり、本業の傍ら店に来て工事をします。
 『地域おうえんサポーターズ』が動き出すと、商店街有志NPOのメンバーもこれに参戦します。商店街の通りに古くからある松本屋工務店の野口さんは、先々代が手がけた『サントス』の天井の左官工事を自ら買って出ました。近所の広嶋屋畳店の店主で商店街組合理事長の本田さんは内装にイ草の表を施すユニークなアイデアで応えました。

ボロボロだった建物が生き返っていく

ボロボロだった建物が生き返っていく

たくさんの人の想いがどんどん集まって、見る間に建物がキレイになっていきます。

 『地域おうえんサポーターズ』では、資金があって始める事業でもないし、たちまち一度にたくさんのお客さんを迎えるようなサービスもできないので、はじめから大々的な宣伝はしないとのこと。
 『Santos.Cafeサントスカフェ』は単に飲食店をオープンするというだけでなく、『地域おうえんサポーターズ』が考える地域おこしのモデルを提案する拠点としたいのだそうで、地元商店と連携しながらまちの新しい交流拠点としてどう発展していくかが課題となります。

 『サントス』の建物やお店を支える人たちと気持ちを共有しながら、ファンが増えて行くことを願っています。そうやって、いろいろな思いが集まった国登録有形文化財建物『Santos.Cafeサントスカフェ』、間もなくオープンの日が近づいています。

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