23日の西武戦で逆転の満塁本塁打を放った井上=ZOZOマリン

 力強さがあった。魂のこもったスイングから繰り出された打球は大きな弧を描き、スタンドに吸い込まれていく。井上晴哉内野手は悠々とダイヤモンドを回った。復帰2試合で3発。1本目は復帰初戦(23日埼玉西武戦、ZOZOマリンスタジアム)、3点ビハインドからのプロ入り後、初となる満塁弾で逆転勝利を呼び込んだ。2本目と3本目は翌24日の埼玉西武戦。2打席連続でセンター方向へと飛び込んでいった。2試合で3発8打点。扁桃(へんとう)炎を患い2軍落ち。しかし最短10日で復帰した長距離砲は即座に結果を出した。さまざまな想いが入り乱れる中での打席だったが、ひとたび打席に立つと心を無にし、集中した。

 「悔しかった。やりきれない気持ちでした。今年はシーズン1年間、全部出るつもりで1月からやってきたのに、体調不良になって首脳陣の期待を裏切ってしまった。情けない気持ちでした。だから、復帰したら結果を出そうと。迷惑をかけた分の責任を取る方法は結果を出すしかないと思っていました」

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 体の異変は突然、襲ってきた。甲子園でのタイガース戦が雨天中止となった11日。帰京の新幹線の中で体に異変を感じた。体の重さと首の痛みを感じた。最初はここまでの疲労の蓄積だと思った。翌朝、体温を測ると38・9度。まさかの高熱に頭が真っ白になった。この日はZOZOマリンスタジアムでベイスターズとのナイトゲーム。どうすべきか悩んだが自身の使命と今季にかける想いは足を球場へと向けさせた。

 「自分の中で葛藤があった。せっかくここまで試合に出ることができている。体調不良を訴えて、チャンスを手放すようなことになってもいいのかと。だから我慢して気合で熱を下げて試合に出ようと。一方でチーム優先の想い。ベストな状態ではない自分が試合に出て足を引っ張るようなことがあってはならない。その二つの気持ちが自分の中でぶつかっていた」

 最後は野球人としてベストではない自分の状態をチームに隠すことを良しとしなかった。球場入りする際も体がふらついたこともあり覚悟を決めた。病院に行って点滴を打った。井口資仁監督からは「とりあえず今日は休め。明日、元気になってくれたらいい」と即抹消とはせず、1日の休養を与えられた。ここまでガムシャラに頑張ってきた背番号「44」へのうれしい配慮だった。そんな指揮官への想いに応えるべく、1日で直すと気合を入れてベッドに入り、迎えた翌朝。しかし、想いとは裏腹に熱はさらに上がった。再度、病院に行き今度はドクターストップがかかる形で1軍抹消が決まった。「悔しさと自分への情けなさしかなかった」と期待に応えられなかった自分を責めた。肩を落とし病院を出ようとした時、携帯電話がなった。西野敬2軍マネージャーからだった。電話に出ると「代わるからちょっと待って」と言われた。そして聞き慣れた優しい声が聞こえた。井口監督だった。

 「しっかりと熱を下げて、この機会に一回また状態を戻して帰ってこい」

 その言葉に置き場のない悔しい想いはスッと晴れた。こうなってしまったものはもう仕方がない。出直すしかない。最高の状態でチームに貢献できる選手としてまた1軍に戻る。そう決意し、ひたすら静養に徹した。ただ1軍の試合時間になると気になって目が覚めた。自宅のテレビで見ていると安静にしている体が興奮で火照った。「試合を見てしまうとどうしても興奮して熱が出てしまう。そんな感じだった」と振り返る。

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 井上の気迫は通じた。4日で高熱が下がると5日目には体を動かせるようになった。19日の2軍戦で実戦復帰を果たし、21日のイースタンリーグ・ジャイアンツ戦(ジャイアンツ球場)で4安打8打点。一発回答で23日のライオンズ戦にて最短10日で1軍へと戻ってきた。そしてすぐに最高の結果で期待に応えた。

 「オレがやらないといけないという責任感と、オレがやってやるという気持ちで試合に挑んでいます。もう二度とこんな悔しい想いはしたくはない。再スタート。ここから全部出るつもりで責任を持ってやっていきます」

 1軍再合流した時に井口監督にかけられた言葉がある。「プロ野球は今からだぞ!」。シーズンを通じて1軍にいたことがない井上にとってはここからは未知の世界。しかしプロで実績を重ねた指揮官はここからがプロ野球の醍醐味(だいごみ)あふれる時期が始まると言った。その言葉の意味を肌で感じるために背番号「44」は魂のスイングを重ねる。本塁打は初の2桁10本に到達した。ただ、まだまだ先へ。暑い夏を超えた先に見えるものを探す旅は続く。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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