マウンドで雄たけびをあげるボルシンガー。7月2日時点でリーグトップの10勝(1敗)を挙げている=6月16日、ZOZOマリン

 それは入団が決まった時から決めていたことだった。マリーンズの新外国人として1月に来日したマイク・ボルシンガー投手は初めて訪れることになる異国の地で6月に予定日となっていた第1子を産むことを望んだ。通常、夫人の出産に立ち会うために球団から一時帰国が認められるが、その選択肢を最初から自身の意志で除外してのマリーンズ入りだった。ジャパニーズドリームをつかむため、そして家族と一緒に過ごす時間を大切にしたかった。

 「いろいろな考え方があるだろうけど、ボクは日本で産むことが最良だと思っていた。初めてのチャレンジである日本の野球で自分にとっての大きなチャンスを逃したくなかった。しっかりと毎週、登板をして結果を出したかった。それにずっと家族と一緒にいることが自分にとっては必要。妻ともそう。そして新たに生まれてくる息子とも1日でも早く一緒に住み、3人の時間を共有したかったんだ」

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 強い決意で来日した男は開幕すると結果を出し続けた。6月23日のライオンズ戦(ZOZOマリンスタジアム)で9勝目を挙げると、次の登板に向けた調整とローレン夫人への気遣いを両立させた。出産予定日だった26日は午前9時から船橋市内の病院に直行し、夫人の手を握り続け、寄り添った。結局、この日は生まれず、待ちに待ったその瞬間が訪れたのは翌27日の午前11時3分。出産に立ち合い、息子の顔を見た後に「1時間くらいしか寝れなかった」と笑顔を浮かべながら球場入りし、首脳陣とチームメートに報告。周囲は疲労を心配したが、どこ吹く風とばかりにさっそくキャッチボールなどで汗を流し、次の登板も予定通り30日のホークス戦(ヤフオクドーム)となった。公私を両立させることを望み来日した男は結果を出した。アウェーでの昨年の日本一王者相手に7回3安打1失点で自身9連勝のリーグ10勝一番乗り。新米パパとしての初勝利を手にした。

 「日本で息子が生まれ、特別な1週間、特別な月となった。子供が生まれた直後の登板で自分の投球ができて、勝てて本当に最高だ。ウイニングボールは息子にプレゼントするよ。今はすべてが楽しくて充実していて仕方がない。日本での生活は最高だ」

 貪欲な姿勢が結果を生み、充実した日々へとつながっている。登板前日はモニターにかじりつき、メモ帳片手に相手チームを徹底チェック。登板した投手、リードした捕手への聞き込みを行い、相手打線の状態を見極め、自分の中でのシミュレーションを行う。時には相手打者のフリー打撃をベンチで偵察することもある。また通常、先発する外国人選手は登板期間内にブルペンに入るのは1回で球数も多くはないが、ボルシンガーは2回、ブルペン入り。入念にボールをチェックして登板するなど準備に準備を重ねてからマウンドに上がる。それがここまでの12試合に登板して10勝1敗、防御率2・20という最高の数字となって表れているのだ。

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 公私ともに忘れられない最高の1年は続く。生まれた息子はルークと名付けた。ボルシンガーは息子を抱きかかえながら、遠い未来のことを考えた。それは自分が野球を辞め、アメリカに戻り、子供も大きくなっている時のことだった。

 「いつかアメリカに戻ってもボクは日本のことを想い続けるだろう。そして息子もまた自分が生まれた日本という地に興味を持つと思う。自分が生まれた場所、そしてパパが投げていた球場を見たいと考え、日本に旅立つことになると思うんだ。そんな時は、息子と一緒に行きたい。一緒に歩きながらいろいろな思い出の場所を紹介したい。この病院で生まれたんだよとか、この球場でパパは勝ったんだよとか、そういう話をしながらね。まだまだ未来のことだけど、そんな日が来るのが楽しみで仕方がない。だから今は、いろいろなメモリアルな場所をつくり続けていきたいと思うんだ」

 7月2日、ボルシンガーは監督推薦でのオールスター出場が決まった。外国人のシーズン9連勝以上は9人目(新外国人は4人目)。9戦9勝の9試合連続勝利は郭泰源(ライオンズ)に並んでプロ野球最多タイ記録となっている。最高の1年はまだ中盤。ここからまだまだ記憶に残る異国での日々は続く。新助っ人右腕の大活躍で「優勝」という最高のメモリアルも現実味を帯びてきている。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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