熊本地震義援金募金に参加し、涙を見せる伊東監督=4月19日、QVC(写真左)
ファンからもらった励ましの絵と手紙(同右)

 監督室に戻り、また涙した。4月19日、伊東勤監督は地震で被災した故郷・熊本を思い、試合前に募金箱を手に義援金を呼び掛けた。これにホークス、マリーンズの選手も加わり、みんなで呼び掛けた。試合開始2時間前にも関わらず、長蛇の列ができた。沈痛な面持ちで現れた指揮官に自然と拍手が沸き起こった。人の優しさ、思いやりのこもった拍手に自然と涙腺が緩んだ。どうしても耐えられなかった。人目をはばからず、ポトリ、ポトリと大粒の涙をこぼした。募金活動が終わるまで、涙が止まることはなかった。球場内の自室に戻ると、タオルで顔を拭いた。活動に参加をしてくれた人の顔、掛けてくれた言葉を思い返すと、また目が潤んだ。

 「自分でも涙するとは思っていなかった。皆さんの声があまりにもうれしくて、優しくて我慢できなくなってしまった。一人一人と握手をして、人のぬくもりを感じた。皆さんに励ましてもらって、本当にうれしかった。小さい子どもにも励まされちゃったよ」

 募金活動は3日間、行った。その間に多くの方にいろいろな言葉を掛けられ、励まされた。人のぬくもりをこれほど感じ取ったことは今までなかった。そのすべてが鮮明に記憶として残っている。

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 幼稚園ぐらいの小さな男の子に「頑張ってください」と握手を求められた時のことだ。小さな手に触れると、込み上げる感情を我慢できなくなった。目から涙が落ちた。それを見た男の子は心配をしてくれた。「泣かないでください」と声を掛けてもらった。翌日、また、その男の子が募金の列に並んでいた。驚いた。すると、手に持っていたオレンジ色の画用紙を渡された。そこには絵が描かれていた。ひらがなで「いとうかんとくがんばれ」と書かれ、監督と家族が家で楽しそうに過ごしているかわいらしい絵が描かれていた。小さな男の子が泣いている自分のことを思い必死に書いて、持って来てくれた。その気持ちが何よりもうれしかった。

 手紙も、もらった。茨城県在住の方からだった。「伊東監督の気持ちはお察しします。不安でしょうが、私たちが守ります。伊東監督は試合に集中してもらって大丈夫です。私たちは日々厳しい訓練で人命救助をしてきました。熊本の方々は私たちが守って、一人でも多くの方を救出、救助していきます。どうか私たちを信じて野球に集中してください。頑張れ伊東監督!頑張れ熊本!」。茨城県から応援で熊本に派遣される救急救命士からの手紙。熊本に向かう道中で書かれたものだった。便箋2ページにわたって、ビッシリと熊本で被災した人たちを助けたいという強い思いが書かれていた。読み終えると、思わず手紙に向かって、両手を合わせて感謝をした。

 「忙しい中、私の為にわざわざ手紙を書いてくれた。感動した。いろいろな人が日本中から故郷に応援に駆け付けてくれている。そう思うと感謝しかない。今、この時間にも、いろいろな人が熊本で活動をしてくれている。ありがたい気持ちでいっぱい」

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 4月19日から21日までの3日間、QVCマリンフィールド場外で熊本地震被災地への義援金募金活動を行い、さらに23日、24日の2日間は場内に募金箱を設置し、合計374万6375円の募金が集まった。この募金の全額と、球団と選手会からの義援金200万円と合わせ574万6375円を熊本県に寄付をする。それらは多くの人たちの、困っている人を助けたいという尊い気持ちのこもる大切なお金だ。

 指揮官は募金を通して、人のぬくもりに触れた。そしてその人たちの思いも併せて、被災地のことを忘れたことはない。テレビやインターネットで地震速報が出るたびに心が痛む。悲しくなる。ただ、今はプロ野球の監督として、この野球場という職場で仕事を全うすることに専念しなくてはいけないと決めている。伊東マリーンズが目指す諦めない野球、全力野球、一丸野球をグラウンドで体現し、少しでも見てくれる人にそのメッセージを伝えることができれば、こんなにうれしいことはないと思っている。だから、チームを指揮する立場として妥協は認めない。全力で勝ち、本気で選手たちを叱咤(しった)激励する。今も心には、いろいろな人からの「頑張れ」の言葉が残る。その思いに応えるために勝ち続け、優勝するしかない。そう心に誓っている。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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