狩野興道マスター和尚とカフェを切り盛りする奥様のまさ江さん

カフェは文化の花開く場所。例えば、花の都パリのモンマルトルにはかの有名な「Le Dôme」というカフェがある。パリが芸術の都として栄えたのは上質なカフェがあったからこそと思う。ぼくの中では、上質なカフェは「まちのえき」なのだ。ひらがなにするのは、町・街・待ちと駅・益・役などの意味を含んでいるからなのだが。

まちのえきでは、毎日楽しいドラマや新しい出会いが生まれてくる。珈琲は主役ではなくBGM。珈琲の醸すアロマや味わいが、人の思考を鎮静させ、脳の働きを明晰にさせる静かな脇役として存在するのだ。そして語らいが盛り上がるのは、珈琲がゆったりとした心の開放感をもたらすからなのだ。今日も粋な店主に出会うために、心のままに放浪に出ようと思う。

カフェの奧に建つぐちきき観音

カフェを営んでいると日頃からお客様の悩みやぐちを聴く機会が多くなる。珈琲に含まれる成分が、心を開かせ、人を饒舌にさせるからなのだが、的確なアドバイスが出来たのか常に疑問だらけなのだ。ただお客様の心をときほぐすことだけは心がけているつもりだ。

悩みやぐちを聞くことも慕ってくれるお客様にとってカフェマスターとして大切な務めのひとつで、ぼくのつたない人生経験を元にいろいろとアドバイスしている。

そんなある日、「ぐち聞き観音のカフェ」の話をみこちゃんと千春店長が話していた。パイプをふかし、耳をダンボにして聞いていると、この合掌館からさほど遠くない市原市だとか。わぉ、これはさっそく突撃と合掌館を後に、ぼくは車を走らせていたのだった。

ログハウス風の店内

館山自動車道を千葉方面に北上し、市原市の佐是、国道409号線付近にそのカフェがあるのだった。

「こんにちは」と入口を開けると、ニコニコとマスターが出迎えてくれた。作務衣と手ぬぐい頭巾にただならぬオーラを感じる。

「どうぞ、どうぞ。ここはお寺が営むカフェなのですよ」。

なるほど、境内が広すぎて気づかなかったが、庭先の奥に大きな観音さまが建っている。

「あれがぐちきき観音ですか?」。

「そうですよ、よかったらお参り下さい」。

微笑む観音さまを見上げ、さっそく手を合わせ、ごあいさつを済ませ、スッキリした気分でカフェに戻り、手作りケーキとバニラ風味の美味しい珈琲を注文し、マスターにお話を伺った。

バニラ珈琲とケーキでほっとひと息

「あれは幸福観音です。目安箱には、人には言えないぐちが入っていますよ。小さなトゲがとれる気分になると評判で、通称ぐちきき観音と呼ばれているんです。青山さん、いかがでしたか」。

「ぼくもカフェマスターをしていて、悩みごとやぐちを聞くことが多いので、ぐち聞きの秘訣を聞いてみましたよ」。

マスターは、この寺の住職で31世、31代目の瑞鑑興道(ずいかんこうどう)だ。400年続いた名家で、城郭や古墳があった場所に寺を開いたのだそうだ。

元々、自衛隊員として、国防を担っていた住職。機関銃から数珠に持ち替え、寺よりも話のしやすい空間で、ぐちや悩みを聞けたらとここをオープンしたのだそうだ。人の極限や機微を知り、安心して何でも話せる魅惑的なぐち聞きマスター和尚なのだ。

オープンして7年目 、この10月15日リニューアルオープンしたばかり。庭にハーブを植え、薬膳をベースにしたメニューを加えたのだ。座禅体験や葬儀、終活の相談も宗派問わずに聴いてくれる。

おかゆ作法教室など参加しやすいセミナーもお寺で開催するのだとか。

「悩みやぐちを聞く秘訣は、話す人の気持ちに寄り添い、まず心を白くさせてあげること」と語ってくれた。カフェを後にパイプに火を点け、紫煙をくゆらせる。振り返ると大きな観音さまがぼくをいつまでも見つめてくれていた。

千利休の弟子の南方宗啓が著した『南方録』の、ある人が利休に「茶の湯の極意を教えてください」と尋ね、利休は「茶は服(ふく)のよきように点(た)て、炭(すみ)は湯の沸(わ)くように置き、花は野にあるように、さて夏は涼しく冬暖かに、刻限は早めに、降らずとも雨の用意、相客に心せよ」と答え、それを聞き

「そんなことは、誰でもわかっています」とさらに尋ね、利休が「それができるなら、私があなたの弟子になりましょう」と答えたエピソードを思い出し、ぼくの心にさらに染み込んできた。

お客様に対する心配りや自然へのやさしさ、四季を大切にする心など、茶の湯の心に通じる珈琲道に迷わず精進せよとのぐちきき観音のお告げなのだと感動が心に響き渡っていた。一期一会のおもてなしに、これからも精進したいと心から感じたのだった。

EDOMONS DATA

カテゴリー:悟りへ導くお寺カフェ
店  名:カフェ瑞江
住  所:〒290-0229 千葉県市原市佐是1097(小湊鉄道・上総牛久駅から徒歩20分)
電  話:080-2075-3491
営業時間:11:00~15:30
定休日:月・火曜日(祝日の場合は営業しています)

この記事は、千葉県富津市金谷で営む古民家カフェ「cafe edmonds」のマスターの青山えどもんずが、房総のさまざまなカフェをめぐる放浪記です。
「<第11話>カフェ瑞江 マスター和尚が聞く、癒しのぐちききカフェ」は、2016年10月22日の千葉日報に掲載されました。

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