2015年のドラフト会議で2球団競合した平沢の当たりくじを引いた伊東監督

 あの日の事は忘れない。2015年のドラフト会議翌日、仙台育英高校に伊東勤監督が指名あいさつに訪れた。平沢大河内野手にとっての第一印象は「優しそうで、大きな人」。そして指揮官自らクジを引いて、引き当てた交渉権獲得の紙を手渡された。そこには直筆で「一緒に頑張ろう」と書かれていた。初めてプロ入りを実感した瞬間だった。

 「学校までわざわざお越しいただいてビックリしました。あとで関係者から『監督が新人の指名あいさつに直接、行かれることは今までない』と教えてもらいました。うれしかったです」

 振り返ってみると伊東監督が就任5年間でドラフト指名した選手の指名あいさつに向かったのはこの1回限りだった。通常は担当スカウトにその後のあいさつなどは一任するが、この時ばかりは自らがその素質に惚れ周囲を説き伏せ、競合覚悟で指名に踏み切った素材に会うために東北新幹線に飛び乗った。平沢はそんな監督がクジを引く瞬間をテレビで見ていた。そして満面の笑みで喜んでいる姿に、期待をしてもらっていることを幸せに感じた。あれから2シーズンが過ぎようとしていた8月13日。ZOZOマリンスタジアムの練習を終え、ロッカーに戻るとチームメートから伊東監督が辞任をすると聞かされた。驚きだった。

 「監督が引き寄せてくれた縁があってマリーンズに入って、この2年間でいろいろな事を教えてもらいました。ただ、監督がボクに期待されている姿、結果は今のところは残すことができていない。それは本当に申し訳ないですし、悔しいです」

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 平沢にとっては父親のような優しさと厳しさを感じる指揮官だった。プロ初安打は1年目の昨年8月17日のイーグルス戦(Koboスタ宮城)。直接、言われたことはないが地元・仙台での試合の時はチャンスを与えてくれているようにスタメン出場をすることが多かった。初ヒットはそんな気持ちに応えるべく必死に打った結果だった。その後もなにかと仙台では出場機会があり、平沢もまた結果を出してきた。

 「もっと若々しく、ハツラツとプレーをしろ!」。練習中、どこか大人しい雰囲気に、口酸っぱく言われ、若者らしくガムシャラにイキイキと行動をすることを求められ続けた。打撃ではしっかりと強く振り切る事、前に流れやすいフォームにも、軸がぶれないように打つことなどを指導された。守備面でも、ばらつきのあるスローイングの改善に取り組み、少しでも指揮官の期待に応えられるように取り組んでいる矢先に辞任を聞かされた。

 「こんな若手の自分にもよく話し掛けていただいた印象があります。これから残り試合でしっかりとやれることをしっかりとやって少しでも成長をしているところをお見せしたい。あの時、ボクを指名してよかったと言ってもらえるような活躍をいつかしたいです」

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 仙台育英高校で初めて顔を合わせ、握手を交わした指揮官は平沢と別れた後、スカウトや関係者にうれしそうに熱く語ったことがあった。「アイツは大物になるぞ! 握手をして分かった。向こうからガッチリと握手をしてきて、いい手をしていた。体は小さいかもしれないが、手はゴツくて、しっかりとしていた。久しぶりだな。握手をして、感じるものがあったのは。大物になるいい手だった。本当に将来が楽しみだ」。この事は後日、本人も耳にした。指揮官が志半ばでマリーンズのユニホームを脱ぐと聞かされた時、その事を真っ先に思い出した。「期待に応えるような大物になれていませんね」。悔しそうな表情で天を見上げた。ここまで2年間で57試合に出場し、24安打、5打点、1盗塁で本塁打はゼロ。そこまで期待をして楽しみにしてくれたにも関らず、ここまでは結果を出すことが出来ていないもどかしさをどうしても痛感してしまう。ただ、まだ時は残されている。シーズン残り41試合。共に歩める限られた時間の中で成長をした姿を少しでも見せる。そして「大物になる」とうれしそうに言ってくれたその期待に、いつの日か応えられるような存在になるべく、若者は毎日を必死に生きることを改めて決意する。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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