10月のドラフトでは高校ナンバーワン内野手の平沢を引き当てた

 年の瀬の朝。指揮官は東京の雑踏に紛れていた。いつもの喫茶店に入った。アイスコーヒーを注文すると、資料を読みふけった。伊東勤監督の2016年はすでに動いている。春季キャンプの日程、練習方法、ミーティングの段取り。そしてオープン戦の移動方法、日程などを次から次と決め、マネジャーに指示を出した。一息つくと、しみじみと話し出した。

 「一年は早いな。つい、最近、ここで同じように来年の打ち合わせをしたような気がする。あっという間だなあ」

 1年前もここでさまざまなことを決めた。チームスローガンを考えた。いろいろな思いを込めて「翔破~熱く!勇ましく!!泥臭く!!!~」とした。渡り鳥などが遠い目的地までさまざまな試練を乗り越えながらも、たどり着くという意味で就任した13年より採用している「翔破」。これにシンプルなサブタイトルを加えた。選手たちに熱い気持ちで戦ってほしい。窮地でも諦めない勇ましさ。どんな形でもいい。1点を奪い、守り抜く泥臭さ。言葉に気持ちを込めた。キャンプから選手たちに厳しさを求め、時には非情の鬼となり、チームを叱咤(しった)した。Aクラスの3位に滑り込んだ。クライマックスシリーズでは札幌でファイターズを撃破し、ファイナルステージまで進んだ。最後はホークスに敗れた。「惜しかったですね」。声を掛けられることが多かった。そのたびに指揮官は笑顔で応対しながらも、心の中にいるもう一人の自分に問いかけた。

 「惜しかったでは駄目だ。来年は周りから『惜しかった』と言われないようにしないといけない。もっと強く、熱い気持ちで、Aクラスでなく優勝を目指す。この結果にオレはまったく満足をしていない」

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 強いチーム、優勝を目指すには団結力が必要だ。気持ちを一つにする。それはチームだけではなく、裏方やフロントにも望んだ。15年3月31日、本拠地開幕戦の試合前セレモニー。いつも通り、グラウンドに監督、コーチ、選手が呼び込まれて登場した。その後だ。フロント勢もフィールドに登場し、ファンにあいさつをした。異例のことだった。「一つになりましょう」。指揮官の提案だった。

 うれしいことがあった。ドラフト会議後に偶然、目にしたあるテレビ局のスポーツニュース。そこでマリーンズのドラフト会議の舞台裏が紹介されていた。ドラフト1位で指名した平沢大河内野手(仙台育英高校)をイーグルスと競合。伊東監督がクジを引く瞬間。カメラはスカウトたちの姿を映した。両手を合わせて祈る若いスカウトが映った。獲得が決まった瞬間。今度はスカウト陣が待機するホテルの控室が映し出された。両手をあげて喜ぶ姿。ガッツポーズをする者。抱擁するスカウトたちを目にした。まさに、それこそが指揮官のマリーンズに求めている姿だった。熱い気持ちで一つになりたい。あの瞬間、みんなで喜びを分かち合えていたことを再確認し、またうれしさがこみ上げてきた。大切にしたい気持ちだった。

 「いい番組だったな。あの映像を見てうれしくなったよ。あれがマリーンズにオレの求めている姿。みんなが心から喜んでいる姿に、ジーンときた。来年はいろいろな場面でそうありたいなあ。グラウンドの中でも外でもね。一つになりたい」

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 熱く闘った2015年は間もなく終わる。ただ、熱き心はこんなものではないと思っている。「惜しかった」ではなく、「よくやった。ありがとう」と言ってもらえるような結果を出すには、まだまだ全身全霊を野球に込める必要があるはずだ。妥協や、容赦の入り込む余地すらない姿勢。ゴールにたどり着いた時に、倒れ込むような極限の日々を選手たちには求めるつもりだ。そしてその思いをファン、スタッフとも共有して挑む。そんな熱き覚悟は、どんなにぶ厚く強靭な壁をも突破できると信じる。

 喫茶店を出た。次にこの店に入る時は、もう16年シーズンが終わっている。「必ず結果を出す」。オフに入って、温厚さを取り戻していた男の目が一瞬、勝負師に戻った。「今年はいろいろとありがとう。また来年な」。コートを羽織ることもなく、落ち葉が飛び交う都会の雑踏の中に消えていった。しばし休息を挟み、いよいよ伊東マリーンズの4年目が動き出す。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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