笑顔の伊東前監督(後方)と捕手陣の(左から)田村、柿沼、吉田=ZOZOマリン

 決めていた。9日に行われたZOZOマリンスタジアムでのホーム最終戦。伊東勤前監督にとっても本拠地での最後の試合となったこの試合で、田村龍弘捕手は打席に立つ際の登場曲を変更した。来生たかおさんの「Goodbye Day」。指揮官が好んでこの歌を歌うと関係者から伝え聞き、感謝の想いを込めた。

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 「監督との思い出は、いっぱいありすぎて、語れないぐらい。自分がマリーンズへ入団した時に監督に就任をされて1年目から使っていただき、数多くのお言葉をいただきました。迷惑を掛けてばっかりで今は申し訳ない気持ちです」

 試合前、マスコミから指揮官との思い出を聞かれた田村は神妙な表情で、そのようにコメントした。高卒1年目から1軍に抜擢(ばってき)をしてもらうと、「いい経験になる」と異例のクライマックスシリーズでもベンチ入り。3年目の2015年からはレギュラー捕手として起用をしてもらった。同じ捕手出身の監督ということもあり厳しく叱責(しっせき)されることも多かったが、その言葉の節々には成長を期待する優しさが感じられた。

 口酸っぱく言われたことがあった。「キャッチャーはねっちこくないとダメだぞ」。事あるごとに粘り強い精神の大事さを説かれた。どんな不利な状況からでも諦めることなく、打開を試みる思考、そしてたとえマウンド上の投手が絶不調でもそこから打開策を練りだす執念を求め続けた。

 そして迎えた今季。シーズン前に「自分でいっぱい考え、その考えに責任をもってやっていってくれ」と声を掛けられた。これまでのシーズンは細々と指示を受けることも多かったが、多くの部分を任されて挑んだ1年となった。それだけに最下位に終わった結果に悔しさと懺悔(ざんげ)の想いが心を覆った。

 本拠地最終戦の試合後に監督室のドアをノックした。「ありがとうございました」。強く握手を交わした。「頑張れよ」。ねぎらいの言葉をもらうと、その後は頭が真っ白となり、ほとんど会話を交わすことはできなかった。ただ、それでよかった。「最後に監督からの言葉が欲しくて監督室に行ったわけではないですから。ただ、5年間の感謝の気持ちを伝えたくて行きました。とにかくその想いをお伝えしたかった」。ここまで自分に期待をしてくれて、起用をし続けてくれた指揮官へ心の底から感謝の想いを伝えたかった。そして来る新たなシーズンでの巻き返しを誓った。

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 翌10月10日に仙台で行われたゲームをもって伊東マリーンズは今シーズン全日程の143試合を終えた。指揮官は退団をして、ユニホームを脱いだ。田村は132試合に出場をして打率2割4分8厘、3本塁打、36打点。チーム防御率もリーグ最低の4・22だった。成長を期待され挑んだ1年は悔しさだけが残る結果となった。

 「来年は監督が解説などで、ZOZOマリンスタジアムを訪れることもあると思う。今度は第三者的に見ていただき、『田村、成長したなあ』と言ってもらえるようになりたいと思っています。監督から『オマエは俺がいないと駄目だな』と怒られないように、5年間教わったことを頭に入れて、全ての面でレベルアップし、球界を代表する捕手になりたい。そして、いつの日か褒めてもらえるような捕手になりたいです」

 プロ野球の世界に限らず、どのような指導者、先輩と巡り合えるかで人生は大きく変わる。田村は高校を卒業してすぐに常勝ライオンズで正捕手として君臨をしていた伊東勤と出会い、指導を受けた。それはどこまでも大きな背中だった。時には厳しく、たまに優しく。この5年間はかけがえのない財産となっている。これから先の人生で、この日々をどう生かすかは自分次第。いつか、いつの日か。「おまえ、ねっちこいリードをしているなあ」と笑顔で恩師に褒めてもらえる日が来るのを夢見る。出会いと別れ。成功と失敗。若者はさまざまなものを糧として成長していく。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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