笑顔で選手を出迎える伊東監督=23日、ZOZOマリン

 連日、負けては室内練習場に集まった。それぞれが自分自身の判断でバットを握り、ボールを打ち続けた。ナイターの時は日付が変わる寸前まで黙々と打った。現状打破のためにどうすればいいか。みんなが考え、模索した。その姿を伊東勤監督もまた最初から最後まで見届けた。英二、小林雅英の両投手コーチは「マシンを打つより、人が投げるボールを打った方がよいのであれば」と自ら打撃投手役を買って出た。マリーンズの開幕ダッシュ構想は大きく崩れ、苦しむ日々が続いている。そんな状況を打破すべくチーム一丸で、なんとか光明を見出そうと取り組む姿がある。

 「監督もコーチも皆さんが一緒に練習をしてくれる。みんなでなんとかこの状況を変えようと、結果を出そうと意見を交換しながら行うことができている。とてもありがたい」

 4月23日。マリーンズは2-0でバファローズを破り連敗を5で止めた日。試合後のロッカーで鈴木大地キャプテンはしみじみと話し出した。勝利した瞬間、ベンチで喜びを分かち合い、抱擁を交わした。久々の光景に本来のマリーンズらしさが見えた。時間が経っても余韻の残るロッカーで誰もが勝利の味をかみしめていた。

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 忘れられない出来事があった。「やられたからにはやり返す」。指揮官の猛烈な檄の下、挑んだ4月18日からのZOZOマリンスタジアムでのホークス3連戦。敵地で開幕3連敗を喫した屈辱を晴らすべくホームにホークスを迎えて挑んだが、再び3連敗とはじき返された。情けない気持ちと悔しさが入り交じる思いで試合後、室内練習場に野手たちは集まった。練習をしていると指揮官が現れた。「みんな、集まってくれ」。あまりの神妙な表情に誰もが厳しく叱責されることを覚悟した。しかし、違った。「もう少し。もう少しの辛抱だ」。伊東監督は、そう言うと息子を見るような優しい表情で選手たちに語りかけた。

 「きょう練習したから、すぐにどうこうなることはないかもしれない。ただ、こうやっていろいろと悩んで苦しんで、もがきながらみんなでこうしてやっていることはキミたちの将来、いや人生で必ず生きる。だから、継続してやっていこう。悔しさを胸に根気強くバットを振っていこう。オレは負けない。みんなも負けないでくれ」

 指揮官の言葉は印象的だった。鈴木キャプテンの胸にもスッと入り込み、響き渡った。だからその日、練習が終わると今度は野手だけで話し合いの場を持った。若い選手、中堅選手、いろいろな意見を聞き、思いを交換した。打てない焦り、苛立ち、悔しさを素直に吐露し合い、勝ちたい思いを共有した。そしてこれからもマリーンズの勝利のために、必死にプレーをし、練習をし続けることを誓い合った。

 「シーズンが終わった時に4月は苦しかったけど、それを乗り越えてここまで来たと言えるようにしたいと話をしました。それにこうやって試合後も遅くまで投げてくれたり、アドバイスをしてくれたりと見守り手伝ってくれる監督、コーチ、スタッフの方がいらっしゃる。声を枯らして応援してくれるファンがいる。感謝の気持ちをもって、一緒に勝利のために戦おうと改めてみんなで口に出して話をした」

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 もちろん、すぐに結果が伴うほど甘い世界でもなく、現実は漫画のようにはいかない。ただ、一つ一つのプレーに勝利への執念、意識が強く見えるようになってきた。試合に出ている選手も、出ていない選手もコーチもスタッフも気持ちを表に出して泥臭く戦うマリーンズ本来の姿が垣間見えるようになってきたことは大きな光明だ。

 試合後、1時間以上もボールを投げ続けた英二投手コーチは「魂を込めてボールを投げています。それはマシンには絶対にできないこと。気持ちを込めて野手の方に投じています。投手コーチだから野手は関係ないなんてことは絶対にない。みんなでなんとかしようとするのがマリーンズの良さです」と語気を強める。そんな魂の練習を打撃ゲージの後ろで見守る指揮官が、ふとキャッチャーミットを構えるポーズをとったことがあった。「オマエたちが魂をこめて投げるならオレはそのボールを魂で受けるつもりぐらいの強い気持ちで見守る」。ライオンズ黄金時代の正捕手がミットを構えるポーズを見せ、ニヤリとほほ笑んだ時、英二投手コーチは強いメッセージを受けたような気がした。「この人のために勝ちたい」。強く思った。

 チームは一つ。マリーンズは束になって4月23日、満員のファンで膨れ上がったZOZOマリンスタジアムで連敗を5で止めた。まだまだ好転していると言い切れる状況ではない。だが、原点回帰して挑む姿勢に指揮官は反撃の時が近づいていることを予感している。

 「必ず巻き返す。必ず、このチームを立て直して見せます」

 ここまで6勝13敗。大きく出遅れたが、まだ戦いは124試合、残っている。その中で、伊東マリーンズは態勢を立て直し、全員一丸野球で反攻に転じる。悔しさを刻み込んだ4月から捲土重来、巻き返しの戦いが始まる。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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