17日から2軍に合流した安田。「いろいろなものを感じることができた」と1軍での日々を振り返った

 試合が雨天中止となった16日。井口資仁監督は室内練習場で微動だにせず打撃練習を見守っていた、視線の先にはドラフト1位ルーキーの安田尚憲内野手。外は雨が降りしきっていた。しばらくすると意を決したように動き出した。首脳陣から意見を求めると深くうなずいた。1月の自主トレからここまで注目を集めてきた若者の2軍合流を決断した瞬間だった。

 「彼はマリーンズのクリーンナップ、そして日本を背負う選手になってもらわないといけない。体力面、技術面も含めて下でしっかりと育てるタイミングに来たかなと判断した。こちらが急かすわけにはいかない。誰だって、階段を一気に何段もかけ上ることはできない。一歩ずつ、しっかりと磨いてほしい」

 指揮官は集まる報道陣にそう告げると視線を遠く室内練習場の天井へと向けた。高校通算65本塁打のスーパールーキーもオープン戦では13打数1安打2打点とプロの壁と戦っていた。チーム内では開幕1軍争いの競争が激化。それに合わせて出場機会も減っていた。当初はオープン戦期間中の1軍帯同も視野に入れていたが、翌日の17日から2軍の公式戦が開幕する今こそが切り替える一番のタイミングだと判断。方針を転換する決断に至った。

    □     ■     □

 この若者のあふれんばかりの才能に誰よりもほれこみ、夢を膨らましている指揮官は2軍に送り出す前に、伝えたいことがあった。だから全体練習が終わると監督室に安田を呼んだ。初めてじっくりとソファに腰を落とし、話し合った。まず、2軍に合流をしてもらうことを告げた。若者が宣告に対してどのような反応をするか、その目を確認した。「目がウルウルしていたね」。満足だった。いくら高校を出たばかりとはいえ、2軍落ちに悔しさを見せないようではプロではない。どんな状況下、状態であれ、安易に妥協せず高みを望むその根性を評価した。そこからは、まくしたてるように伝えた。

 「これから先は中途半端には1軍に上げるつもりはない。下で結果を出して、しっかりとした自信を作り上げて来てくれ。次、上がるときは自分のポジションでレギュラーを取る時。そういう覚悟で日々を取り組んでほしい」

 キャンプ、そしてオープン戦とそこまで1軍で使い続けた。もちろん、1軍でいきなり通用するとは思っていない。ただ、最初に1軍投手というものがどのようなものなのかを実感してほしかった。だから一線級の投手が投げる際は積極的に起用した。安田にとってそれは今後の指標となる大事な体験となった。

 「いろいろなものを感じることができました。もちろん高校生で150キロ近く投げる投手はいます。でも一番の違いはベース板の上でのボールの力強さの差。プロはインパクトの瞬間にもボールに勢いを感じた。それをはじき返すスイングが必要」

 安田はそう振り返った。18歳という若さで一流のボールを打席の中で自らのバットで体感し理解することができたこの2カ月は決して無駄ではなかった。技術や肉体面での魅力だけではなく、現状の自己分析をしっかりと行い、自分なりに理解ができることこそがこの若者の最大の長所であると把握していた指揮官は、だからこそこれまで1軍の修羅場を体験させ続けてきた。そしてこの日を持って育成計画は次のステージへと移行した。送り出す前にもう一言、指揮官は付け加えた。

 「いつだって、その一流の球を思い出せ。ファームの試合で満足をするなよ。一番若いけど、チームを引っ張るような存在と成績を出すつもりで頑張ってこい」

    □     ■     □

 安田は頭を下げ、監督室から立ち去った。しばらくの時間がたった。再び室内練習場から打球音が聞こえてきた。背番号「5」の姿が見えた。雨が降り続く春の日。大粒の汗を流しながら短めの距離でマシン相手にバットを振っていた。若者は、そのマシンに何をイメージしているのだろうか。ホークス千賀か、バファローズ金子か。ただひたすら打ち続けていた。翌17日、安田は2軍に合流。18日のイースタン・リーグ横浜DeNA戦(浦和)で初安打を記録した。しかしその表情に笑顔は一切なかった。誰もが見たことがないような高みを目指す挑戦が始まった。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

関連リンク

関連するキーワード

千葉ロッテマリーンズ チャンネル

「千葉ロッテマリーンズ」の公式チャンネルです。マリーンズ広報担当が最新情報をお届けします。

ランキング

人気のある記事ランキング

【フォト部】投稿写真ギャラリー 2018夏季(6〜8月)

毎月1名様限定、投稿写真をTシャツに特別加工してプレゼント!