7月18日のオリックス戦でプロ初勝利を挙げ、お立ち台で笑顔を見せる有吉(左は伊志嶺)=ZOZOマリン

 順風満帆にスタートしたルーキーイヤーも、やはりプロは甘い世界ではなかった。試合後にロッカーでグラブを磨く有吉優樹投手の表情は日に日に険しくなっていた。地元・千葉県の大網白里市出身の選手として注目をされて入団。スタートは最高だった。開幕1軍に抜てきをされるとセットアッパーとして10試合連続無失点。投手陣が不振の中、大きな輝きを見せた。しかし、5月13日のファイターズ戦(東京D)で負け投手となると、同月24日のホークス戦(ヤフオクD)でも負け投手。6月7日のドラゴンズ戦(ZOZOマリンスタジアム)でも黒星がつき、7月2日のファイターズ戦(同)でも負け投手で中継ぎ投手ながら4敗となった。

 「負けがつきはじめてから精神的にキツかったです。アマチュア時代とは違う。ファンあっての自分。負けたら応援してくれているファンの人に本当に申し訳ないという気持ちになりました。調子が悪くて打たれましたなんていう言い訳は聞かない世界ですから」

 アマチュア時代には毎日、試合が行われることはない。さらに社会人時代は先発だったこともあり、毎日、ブルペンで待機をして肩を作る日々に戸惑いもあった。打たれた翌日の切り換えがなかなかうまくいかない。悩み苦しんだ。

 「明日、投げたくないなあとか、今日も負け投手になったらどうしようとか、朝起きて、もう今日が始まってしまうのかというようにマイナスな気持ちになっていました。アマチュア時代にはなかった感覚でした」

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 メンタル面で追い込まれたときに、立ち返ったのはやはり原点だった。大学卒業後、野球をやるため、千葉から縁もゆかりもない福岡に単身、渡り九州三菱自動車に入社。社会人野球を続けた。ただ、そこは営業マンとしてノルマを達成しながらしっかりと仕事をして、野球を行うことが求められる日々だった。慣れない営業に戸惑いながらも、大好きな野球を続けるために必死に頑張った。壁にぶつかったときは先輩営業マンにお客様との話し方のコツを教えもらったこともあった。そして日々の会話の積み重ねを大事にするという結論に行きついた。だから、ちょっとした会話を繰り返し、コツコツと営業先に顔を出す機会を増やした。気が付けば福岡で多くのお客様と知り合った。それは人と人のつながりの大切さと地味な努力の大切さを知った日々だった。ヤフオクドームで試合が行われた時。練習を終えてベンチに戻ろうとするとスタンドにいた中年女性に声を掛けられた。当時のお客様だった。わざわざ応援に来てくれたことがうれしく励みになった。

 「頑張ってねと声を掛けられてありがたかった。本当に営業マンの時は皆さんに支えられて仕事をしていた。会社の同僚や先輩も好投をするたびに連絡をくれる。そういう人たちが自分の活躍を期待しているわけだし、楽しみにしているのだからクヨクヨしているわけにはいかないと思った。なによりも社会人時代、野球を続けたくて福岡に渡って仕事に打ち込んだ日々を思い出しました。今こうやってプロに入って1軍で投げることが出来ている。それは幸せな事です」

 それから、ブルペン内にいる実績十分な投手陣の動きを真剣に観察するようになった。気持ちの持っていき方、切り替え方。参考になることは多かった。打たれて、ヘコんでいるはずの投手が試合後もすぐにウエート場に足を運び、トレーニングで黙々と汗を流している姿を目にして深く反省をした。

 「今までの自分だったら打たれた日は落ち込んでウエートはできない。でもプロは毎日試合があるわけで、そうはいかない。切り替えが大事だということがよく分かりました。元々、そんな簡単な世界ではない。いつかは打たれる。最初、抑えたのはラッキーで今が当たり前の状態。もっと自分を磨かないといけない」

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 前向きな気持ちを徐々に取り戻すと、7月18日のバファローズ戦(ZOZOマリンスタジアム)では初勝利も転がりこんできた。中継ぎの3番手として五回から登板をすると2回を投げて被安打1、無失点。0-0で迎えた六回には1死三塁のピンチを作るも吉田正、ロメロの中軸をいずれも内角直球で打ち取り、内野フライに打ち取った。その直後に先制をしてのプロ初勝利。白星もうれしかったが、ピンチで自分の投球スタイルを貫けたことは自信となった。

 「内角を攻めるというのが自分のスタイル。これまではどうしても打たれたくはないから外角低めに安全にというようなことも多かったけど、この時は強気を貫けた。自分の中でのベストゲーム」

 まだ確固たる自信や手応えをつかめたとは思っていない。ただ、少しずつセットアッパーとしてプロの世界での生き方が見えてきた。とにかくシンプルにその日、そのイニングを0に抑える。試合が終われば気持ちを切り替え、明日に向かう。応援してくれるたくさんのファンと支えてくれる人たちのために、憧れていたこの世界で結果を残すために、コツコツと悔いなき日々を送る。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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