8月16日の日本ハム戦でプロ初勝利を果たした土肥

 4度目の先発マウンドでつかんだ初勝利は格別だった。プロ2年目の土肥星也投手は8月16日のファイターズ戦(札幌D)でプロ初勝利を挙げた。2カ月半ぶりに巡ってきたチャンスでしっかりと結果を残した。

 「チャンスが来ると信じてファームで頑張っていました。いつも集中して気持ちを切らさずに色々なことに取り組んできた。それが良かったと思います」

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 不運な形でチャンスが消えていた。先発予定だった6月11日のタイガース戦(甲子園)。野手はシートノックを終え、土肥がブルペンでピッチング練習を行い、監督同士によるメンバー交換を行い、まもなく試合開始というタイミングで雨が降り出した。天気予報的には試合は行えるとの見解だったが、雨は強まるばかり。結局、プレイボールがかかることはなく試合は雨天中止となった。

 「ブルペンでの調子が良かっただけに悔しかったです。でも天気には勝てない。仕方がないと割り切るしかなかった。関西出身で知り合いもたくさん見に来てくれていた。本当は投げて勝ち投手になりたいという想いがあったけど、こればかりは自分の力では、どうすることもできないこと。嘆いても仕方がないと割り切るしかなかったです」

 強い思いでこの先発登板に懸けていた。この登板の1カ月前の5月に大阪でうどん店を経営していた父を亡くしていた。野球が大好きで若い時からタイガースのファンでもあった。高校時代(尽誠学園)には父が応援することを夢見ていた甲子園に立つ姿を見せることができなかったこともあり、この舞台での初勝利が一番のプレゼントになるはずだった。雨降りしきる梅雨空を見ながら、ずっとたたずんでいた。結局、その後は試合間隔が空き、先発投手の数が少なく回せるとのチーム事情もあり、1軍登録を抹消。そして次のチャンスはなかなか巡ってこなかった。ただ土肥は2軍で気持ちを切らすことなく懸命に調整を繰り返した。それが功を奏することになる。

 「下でフォームを少し修正しました。足を上げてから地面に着くまでの間を意識的につくるようにしたのです。打者に体が早く向かないように。おかげで、すごくいいボールが行くようになった。結果的にいい方向に行きました。あのまま1軍にいたら多分、つかんでいなかった感覚です」

 我慢して巡ってきた2カ月半ぶりの札幌での登板では丁寧に低めに集めた。変化球でストライクをとり、ストレートはキレがあった。要所でインコースを突く投球でファイターズ打線を翻弄(ほんろう)した。念願の初勝利は誰よりも喜んでくれたであろう父にささげる1勝だった。

 「そのことはなるべく考えないようにしないといけないと言い聞かせていました。父はお店の仕事が忙しくてなかなか試合を生観戦することはなかったけど、いつも気にしてくれていました。最後に試合を見ることができたのは社会人時代の京セラドームだと思います。いつもメールでアドバイスをくれたり、とにかく気にしてくれていました」

 尊敬する父は怖い存在でもあった。学校が終わって自宅に戻ると「練習しろ」とランニングやシャドーピッチングなどをするよう指示された。人よりも努力をすることの大切さをいつも説かれた。「当時は強制的にやらされていた部分もあったけど、それがあるから今があると思っています」。麺類が大好きだった父が一念発起し、うどん店を経営することが決まった時のことは今も脳裏に深く残っている。勝負の一品を家族で試食をすることになった。土肥が中学生の時の事だ。

 「あの味は忘れられません。本当においしかった。オヤジはこんなにおいしいうどんが作れるのかと思いました」

 食べ終わると、うどん店の成功を家族全員で確信した。その後、店は毎日、行列ができるほどの関西では有名な名店となった。

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 大好きだった麺を父は極めようと修業し、陰で努力し工夫を加えながら多くのお客さんを喜ばせ続けた。今、土肥もまた大好きな野球に没頭し努力し、フォームに工夫を加えながら打者を打ち取っている。うどんを作って食べてもらうのも、プロ野球のピッチャーとして打者を抑えスタンドのファンに喜んでもらうのも、人の心を動かし幸せにしているという点で共通する。だからこそ土肥は中学3年生の時に初めて口にした父のうどんの味を一生忘れない。口の中、いっぱいに広がったあの幸せな味。これからも努力と工夫を重ね、マウンドに上がる。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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