ブレークの予感が漂い、周囲の期待も増すばかり

 2年前、一人の投手がロッテ浦和寮に入寮した。身長188センチ、体重73キロ。鹿児島から出てきた長身ながら細身の選手は恐る恐る、プロの世界に足を踏み入れた。二木康太投手はプロ野球のレベルの高さに苦しんだ。当初、ストレートは130キロを超えるのが精いっぱいだった。1年目の春季キャンプ。ストレートを投じると、周りから「今のはチェンジアップ?」と冗談ながら問われたこともあった。もがき苦しみながらの日々だった。

 「出ても130キロ中盤。他の投手たちはビュンビュン速い球を投げているわけですから、つらかったですし焦りましたね」

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 鹿児島情報高校からドラフト6位での入団。高3夏の県大会ではベスト4止まりが最高。先発完投をしたものの樟南高校に1-5で敗れ、甲子園出場はかなわなかった。だから、プロ入りしてチームメートになった先輩たち全員が輝いて見えた。1年上には田村龍弘捕手がいた。高校時代、春夏合わせると4度、甲子園に出場しているスーパースター。かわいがってもらった。食事に連れて行ってもらい、いろいろな話を聞いた。刺激のある言葉が多かった。

 「プロではもっと欲を持って、貪欲に日々を過ごさないとダメだぞ。どういう選手になりたいか?明確な目標や理想を持って、練習をしないとダメ。漠然と生きていてはダメだ」

 田村はその言葉通り、貪欲だった。年が大きく離れた大ベテラン選手にも臆することなくアドバイスを求めていた。1軍入りのチャンスをつかむと、この好機を逃すまいと必死にアピールをしていた。そんな姿に強く刺激を受けた。負けじと貪欲に自分の内側から変化していこうと心に誓った。

 とにかく食べた。子供の時から小食だったが、寮で出された食事を一口も残すまいと、口に押し込んだ。寮での夕食はいつも最初に食堂に入り、最後に出る。白飯は750グラムを食べることがいつしかノルマになっていた。

 「子供の時から食べるのが苦手で、プロに入ってからも苦戦をしました。たくさん食べて体を大きくしないとプロではダメなのは分かっていましたから、必死でした。とにかく食べるのが遅い。寮ではいつも最後まで残って食べています」

 寮生の仲間たちは食事が終わり、次々と自室に戻る。いつもポツリと食堂に取り残された。すると決まって池田重喜寮長が食べ終わるまで付き合ってくれる。テレビで1軍のナイターを観戦しながら、野球談議をした。投球術、打者心理。プロ野球の世界に40年以上の年月にわたって携わる寮長から、いろいろな話を聞ける貴重な時間にもなった。入寮した際は73キロだった体重はいつしか85キロになっていた。

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 「フォームがしっくりきているのが一番の収獲。ストレートもだいぶ、手応えを感じています。変化球もベース盤の中で勝負できています」

 2月に行われた石垣島春季キャンプでは投手陣の誰よりも存在感を見せた。直球は140キロ中盤を記録。カーブ、スライダー、チェンジアップ、フォークと多彩な変化球も披露した。今やマリーンズでもっとも期待される若手投手の一人に挙げられる。

 1軍初登板は昨年、2015年10月5日の本拠地最終戦となった北海道日本ハム戦。2番手として5回を投げて、被安打4、1失点。プロ初勝利こそならなかったが、1軍首脳陣にキラリとアピールする好投だった。もちろん、勝ちたいという思いはあった。それでも試合後、先輩たちから「オマエは先発投手。だから、先発としてプロ初勝利を挙げろということだよ。来年、先発で勝ち投手になれよ」と言葉を掛けられ、納得した。なによりも中学、高校とほとんどの試合を生観戦してくれた父がプロ初登板だけはどうしても仕事があり、駆けつけることができなかった。「そういう意味ではプロ初勝利は父のために取って置いたと思うようにしている。今年こそ父の前で勝ちたい」と切り替え、心に決めた。

 夢と希望にあふれる20歳。もう、あの頃のオドオドとした雰囲気はみじんも感じられない。一回り、大きくなった体からは自信がみなぎる。背番号「64」、躍動の時。2016年、新たな伝説が幕を開けようとしている。

 (千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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