6回にこの日2本目となる本塁打を放ち、ホームを踏むペーニャ=2日、ZOZOマリン

 ずっと考えていた。試合後、勝利の喜びに浸りながらもペーニャはあることをどう伝えようかと悩んでいた。本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われた8月2日のファイターズ戦。ペーニャは移籍1号となる先制の本塁打をマリーンズファンで埋まる右翼に運んだ。最下位に沈むチームを救うべく、シーズン途中で加入した助っ人は77打席目にして、ついにアーチを放った。そして真夏の夜空にこの日、2発の本塁打を打ち込んだ。巨漢の男は導かれるようにお立ち台に上った。

 「この気持ちをどのように伝えていいのだろうか。日本語を教えてほしい」

 その少し前。ペーニャは通訳やチームメートを集めて、真剣な表情で悩んでいた。10分ほどのやり取りが続いただろうか。ようやく意を決したように表情を緩め、何度も伝えるつもりの言葉を反すうしながら、ファンが待つお立ち台に向かった。

 「ヤット、ホームラン。アリガトウゴザイマス」

 インタビューの最後に急きょ、頭に叩き込んだ日本語をファンに披露した。それはペーニャの思いのこもった言葉だった。短いが、その中には深い思いが込められていた。

 「自分はホームランを打つことを期待して入団した。ファンも球団も私の打席ではホームランを期待している。それにもかかわらず、こんなに待たせてしまった。期待を裏切り失望をさせてしまった。だから、その思いをどうしても日本語でしっかりと伝えたかったんだ」

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 第1打席から狙っていた。ストレートを強打すると右方向へと深く上がった。これまでの日本での野球経験の長さがあだになっているように感じていた。だから、この日は原点回帰して打席に立っていた。

 「これまでの私の日本での経験ではずっと変化球攻めにあっていた。だから私は変化球を狙うようになっていた。しかし、今年、日本に戻ってみるとストレートで押されることが多かった。変化球を狙うとストレートはどうしても振り遅れてしまう。きょうはそのストレートを打つと決めていたんだ」

 前日に行われたミーティングでもスコアラーにその旨を相談した。「私もそう思う」。スコアラーも同じような傾向を示してくれた。そして迎えた第1打席。まさに想定通りの攻めに、先制ソロという答えを出した。2打席目を凡退して迎えた3打席目。今度は読みを深めた。「1打席目の本塁打がストレート。ならばここは変化球だ」。フォークに狙いを定め、振り抜くと今度は左翼へと運んだ。待ちに待った移籍1号に続いて2号。ベンチは大いに沸いた。そして最終打席。今度は打席に入る前に少し悩んだ。だからベンチでチームのベテラン・福浦和也内野手の下に駆け寄り、相談をした。「ストレートでいいと思う。ただ高めの甘いゾーンにスライダーが来る可能性もある。その球は打つべきだ。ストレート狙いの甘いスライダーなら打つ。そのスタンスでいいんじゃないかな」

 大ベテランからの納得の回答に自信を深めて打席に入り、ストレートをコンパクトに中前に運んだ。一塁ベースにたどり着くと、ファンに右手を挙げて応えた。「ペーニャコール」が心地よかった。

 「もっともっと打って、チームの勝利に貢献したい。自分は打つことでチームを盛り上げたい。ファンに喜んでもらいたい。待たせた分、ここからガンガン行きたい。それをファンは望んで自分をこんなに暖かく迎えてくれた。その気持ちが本当に嬉しかった。気持ちには気持ちで応えるのが大事だ。必ず打つ。チームはよくなる」

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 打撃の軸として、チームの支柱としてこの男の活躍は欠かせない。こんなこともあった。7月30日の試合後、打撃不振で2軍落ちをしたジミー・パラデス内野手に声を掛けた。「落ち込むな。考えすぎるな。リラックスして打席に向かうんだ。オマエはいい打者。それが出来れば打てる。下でリラックスをして打席に立ってみろ」。パラデスは8月2日のイースタンリーグ・スワローズ戦(浦和)で本塁打を打った。それを伝え聞いたペーニャは自分のことのように喜んだ。それは父親が子供の成長を喜ぶような笑顔だった。苦しい戦いはなお続く。残り試合もだんだんと限られてきた。しかし、男たちは苦しみながら悩みながら、もがきながらも自分たちを信じて戦う。ファンと一緒に勝利を目指す。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)

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